2016年3月8日火曜日

軒端の梅





 「ながめつる今日はむかしになりぬとも
          軒端(のきば)の梅はわれを忘るな」

                               式子内親王



 
 新古今和歌集に出てくる式子内親王の歌ですが、

 梅を見ているきょうの日が、昔のことになってしまっても
軒端に咲いている梅の花よ、わたしのことを忘れないで・・

 というような意味でしょうか・・。

 式子内親王は、わたしの好きな歌人ですが、この歌は
亡くなられる少し前に作られています。




 内親王が晩年に住んでいらした大炊殿(おおいどの)には、
梅の花が植えてあったということですが、梅の花を見つめて
いらっしゃるお姿が目に浮かぶようです。

 彼女はまだ幼い頃に賀茂斎院になられ、21歳のころ
病で退下なさった後、生涯独身で過ごされていますから
晩年にどんな思いで梅の花を見ていらしたのでしょう。

 後年、藤原定家との仲はフィクションとして、謡曲「定家」にも
なっていますから、魅力的な女性だったのだろうと想像されます。




 歌の他にも、琴を弾き、絵も描き、香もたしなんでいらした
すてきな女性だったようです。

 式子内親王集には、こんな梅の歌もありますが、こちらも
何となくさわやかで好きな歌です。


☆匂いをば衣にとめつ梅の花
            ゆくへも知らぬ春風の色

                  式子内親王





(3枚の写真は、2016年3月5日湯島天神の梅まつりで
                     写したものです。)


           

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