2021年1月17日日曜日

読書・「美しい日本の私」川端康成・サイデンステッカー英訳・講談社現代新書

 


 1月15日は、小正月、

             今年も手作りのまゆ玉を出して飾ってみました・・。




 川端康成さんの書かれた「美しい日本の私」を、久しぶりに再読。
 この本は、川端康成さんのノーベル賞受賞記念講演のときの全文と、サイデンステッカーさんの英訳が、後半についています。

 川端さんは冒頭で、日本の美の伝統を、道元の和歌から、「雪・月・花」にたとえて紹介なさっています。

 「春は花夏ほととぎす秋は月
            冬雪さえて冷(すず)しかりけり」     道元
 
              "In the spring, cherry blossoms,
               in the summer the cuckoo.
               In autumn the moon, and in
               winter the snow, clear, cold."

 そして、「雪・月・花」という四季の移り変わりを現す言葉は、日本においては自然のすべて、人間の感情をも含めての美を現すのが伝統であると語られています。




 
 川端さんは、後半にご自分の文学に近い感性を持っている歌人として永福門院の歌を紹介なさっているのですが、こういう感覚を愛していらしたのだと、納得でした。

 「真萩(まはぎ)散る庭の秋風身にしみて
                  夕日の影ぞ壁に消えゆく」

         "The hagi falls, the autumn
                             wind is piercing.
                            Upon the wall, the evening sun
                             disappears."

 川端さんは、この歌のことを、「日本の繊細な哀愁の象徴で、わたしにより多く近いと感じられます。」と、語られています。

 永福門院の歌は、以前に竹西寛子さんが書かれた「式子内親王 永福門院」という本を読んで以来好きでしたので、川端さんが永福門院の歌の世界は、ご自分の感性により近いと語られていたのは、うれしく思いました。




わたしが、彼の言葉で一番こころに残ったのは、
 「白」という色は、すべてを含む色だということ、
        そして
 一輪の花は、百輪の花よりも花やかさを思わせるというところでした。

川端さんの言われる「美しい日本の私」とは、

一輪のつゆを含んだ白い花、それもまだつぼみ・・・・だったのかもしれません。