2015年7月31日金曜日

「失われた時を求めて全1冊」マルセル・プルースト角田光代・吉川泰久編訳 新潮社



 「失われた時を求めて全1冊」マルセル・プルースト 角田光代・吉川泰久編訳を、読みました。



 率直な感想は、★☆☆☆☆ですが、角田光代さんのチャレンジ精神には、脱帽します!      

 わたしが、「失われた時を求めて」を最初に読んだのは、井上究一郎さんの訳が出たときでした。
 読み終えるのに2年以上もかかったのですが、ちくま文庫で、わくわくしながら丁寧に楽しんで読みました。


                     

                井上究一郎訳・ちくま文庫10冊

 最初の1冊を読み終えたときの感動は、いまでも忘れられません。



                 井上究一郎訳・ちくま文庫10冊表紙

  いままでのわたしが読んだ本たちは、いったい何だったのか・・・・・・。
 最高の本だと思いました。
 
 そして、全巻読み終えたときも、感動しました。 事実、20世紀最大・最強の小説と言われているのですが・・。

 それからしばらくして、鈴木道彦さんの訳が、集英社文庫ヘリテージシリーズから出ました。 もちろん、これも全巻読みました。



                 鈴木道彦訳・集英社文庫ヘリテージシリーズ

 鈴木道彦さんの訳の本は、説明も入っていて読みやすくより理解も深まり、これも楽しい読書ができました。



               鈴木道彦訳・集英社文庫ヘリテージシリーズ

 読みやすいということでは、鈴木道彦さんの訳ですが、井上究一郎さんの訳は、最初にプルーストの洗礼を受けた本ということもあり、プルーストの香気が感じられるようで、好きな本です。

 「失われた時を求めて」は、プルーストの絵画・音楽・文学・演劇などに対する彼の芸術観も卓越していて好きなのですが、花などの植物や料理、服装、社交界の話し・同性愛の問題、恋愛、ベネチァやいろいろなところへの旅の話しなどなど、どこを切り取っても、興味深く思索にとんでいて、おもしろく読めます。

 プルーストは、本を読むことは、自分を読むことと言っているのですが、まさにそういう体験が味わえる本だと思います。

 そしていつも読むたびに新たな感動や発見があり、いつまでも古くならない不思議な本です。

 わたしの読書は、あちこち新しい楽しみを求めて彷徨うのですが、いつも最後には、プルーストに戻ってしまいます。

 読書での戻る場所・それがプルーストで、その場所はいつも裏切らず、さまざまに表情を変えて、わたしを待っていてくれます。                  
               

 幸せな読書体験は、プルーストからもらったといっても過言ではないでしょう。

 興味を持たれた方は、井上究一郎さんか、鈴木道彦さん、どちらかの訳で、第一巻だけでも読まれることをお薦めします。                  


エピローグ
 角田光代さんは、あとがきでこんなことを書かれていました。

「プルーストに興味がある人はこの本を読まないでください、そして興味のない人、興味はあるが読むつもりのない人にこそ読んで欲しい」ということでした。

 ああ~っ、ここを、先に読めば良かった!(^^♪
 この本は、わたしの読むべき本ではなかったようでした。
 









2015年7月28日火曜日

異次元の花・サギソウ


 猛暑の中、さわやかな花、サギソウを
見に行ってきました。

 真っ白な鷺が、翼を広げて飛んでいるような
姿は、キュートです。




 サギソウは、ラン科ミズトンボ属の多年草で
湿地に生えます。花の大きさは3cmぐらいですが
丈は20~50cm、風に揺れている姿は、
すてきです。

 わたしが行ったところは、那須町の小さな湿地帯です。
植物がお好きだった昭和天皇も、観察にいらしたところで、
地区の方がたも湿地を大事に守っていらっしゃいます。



 木道の側に咲くサギソウです。


 サギソウは、環境省のレッドリスト準絶滅危惧の指定を
受けているのですが、ハッチョウトンボも住むこのすばらしい
環境のところで、いつまでも咲いていて欲しい花です。





2015年7月25日土曜日

これぞ、イギリスの紅茶!!!


 久しぶりにこれぞ、イギリスの紅茶!
という味に出合いました。

「Ty・phoo」 TEAです。


 タイフーティーというのですが、
イギリスでは、とても人気があるティーバッグで
マグカップにこれを入れて、熱湯100度を注ぎ
3~5分おけば、出来上がりです。

 濃いので牛乳を入れミルクティーにして飲みます。


 一口飲むと、あの懐かしいイギリスの味が
蘇りました。
 これに普通は、ダイジェスティブビスケット2枚ぐらいを
添えて、職場や家で手軽なティ・ブレイクを、楽しみます。

 プルーストのように、一口飲んだだけで、
あのイギリスでの日々のことが、ぱっと思い出されました。

 タイフーティーは、1903年に売り出されていますので
100年以上ものロングセラーのようです。

 パッケイジのデザインは、わたしが見慣れていたものとは
少し変わったようですが、味はそのまま、

でも、イギリスの硬水で入れたら、もっとおいしいだろうなあ
などというのは、贅沢な願いなのでしょうか・・・・。







2015年7月24日金曜日

宮沢賢治のガドルフの百合・・



 「ガドルフの百合」という宮沢賢治の童話があるのですが、ご存じでしょうか・・・。
 この百合は、ヤマユリのことです。




 「ガドルフの百合」は、短い童話ですが、こんな話しです。

・-・-・-・-・-・-・
 ガドルフという旅人が、突然の激しい雷雨にあってしまい雷雨をさけるため、大きな真っ黒い家を見つけ玄関に駆け込みます。



                   


 ガドルフは声をかけるのですが、どうやら無人の家のようでした。
 家に入り濡れた体を拭いて、いなずまがむらさきに光る外を見ますと、10本の美しい白百合が、雷に憤って咲いているのを見つけます。




 また、稲妻が走り、一番背の高い百合が一本、あまりの憤りのために、雷に打たれて折れてしまったのを見てしまいます。

 ガドルフは、自分の恋は、あの百合の花と思っていたのでがっかりして、疲れのために寝てしまいます。

 その夢の中で、二人の男性が取っ組み合いの喧嘩をしているのですが、自分のところにころがり落ちてくるところで目が覚めます。

 それは、大きな雷でした。




 やがて雷も遠くに行き、窓の外を見ると、残りの9本の百合は凛として咲いています。

 そして、木のしずくがさそりの赤い光をうつして、ばら色に光っているのを見つけます。

 それを見てガドルフは、「おれの百合はかったのだ!」と思い、また次の街を目指して、旅たつのでした。
・ー・-・-・-・-・


 賢治は、この童話を作ることになったモチーフとして、18歳のころに、こんな短歌を作っています。

    いなびかりまたむらさきにひらめけば
             わが白百合は思い切り咲けり   賢治




 賢治は、盛岡中学を卒業したころに、鼻炎の手術のため岩手病院に入院するのですが、その時に、看護婦さんに初恋をします。

 賢治はもちろん生涯独身でしたのでこの初恋は実らず、失恋してしまいます。



 
 短歌の中でわが白百合と詠っているのは、初恋の看護婦さんのことと思われます。

 ヤマユリは、賢治の初恋の思い出の花だったようです。

 宮沢賢治の弟の宮沢清六さんの書かれた「兄のトランク」を、久しぶりに読んでみますとやはり、この看護婦さんのことが書かれていました。

 賢治が盛岡中学を卒業した後、蓄膿症の手術を受けるために、岩手病院に入院したとき、原因不明の熱が続き、発疹チフスの疑いで、2か月も入院したそうです。

 そのときに、同じ年の看護婦に秘かに心を引かれたと、書いていらっしゃいます。



 
 賢治の初恋の人は、ヤマユリのような女性だったのですね・・。

 ヤマユリは、毎年この季節になると、家のまわりのあちこちにたくさん咲くのですが、これからは、賢治の初恋を思い出してしまいそうです・・。

 


2015年7月23日木曜日

久しぶりの名著「木」幸田文・新潮文庫



 幸田文・著「木」新潮文庫を、読みました。
 
 わたしにとっては、中勘助さんの書かれた「銀の匙」以来の感動で、名著だと思いました。



 幸田文さんは、1990年に86歳で亡くなられていますが、その後に木にまつわるエッセイを15まとめて出されたのがこの本です。

 最初の「えぞ松の更新」も好きですが、何といっても白眉は、「藤」でした。


 幸田さんが、草木に親しむようになったきっかけは、3つあったとおっしゃるところからこのエッセイは始まります。

 草木に親しむということを、父・露伴は大事な教養のひとつと考えていて、子供たちに教えていたようにもわたしには思われました。

 木の葉から、木の名前を当てることがよくできた幸田さんの夭折なさった賢いお姉さまのことは、植物学者にしたかったと、後年、露伴はおっしゃっていたそうです。

  後半で「藤」にまつわる話しが出てきますが、それは父露伴と幸田文さんの辛くて苦い思い出であり、さらにそれは、ご自分の娘さんの人生のことまで話しが広がっていくことでもあり、3人の個性と人生模様を見事に表現なさっています。

 幸田さんの文は、幸田さんのお人柄がしのばれ、きりっとしていて、見事です。
 
「文は人なり」という言葉は、こういう文をいうのだと思います。「木」は、久しぶりに出あったすてきな本でした。
 

 


(・藤の写真は、須賀川牡丹園で今年写したものです)






2015年7月5日日曜日

毛刈りをしたアルパカさん


 きょうは、「那須りんどう湖LAKE・VIEW」に
行ってきました。
 ちょうど、アルパカが夏に備えて、毛を刈って
もらったばかりのようで、こんな涼しげな
体形になっていました。


 アルパカといえば目がつぶらで大きくて
かわいらしい印象を持っていたのですが、
今回は、ひょうきんな感じがしてしまいました。


一年に一度、毛を刈ってあげないと、夏には
熱中症などになってしまうということです。


 以前に那須動物王国で羊の毛刈りを見たことが
あるのですが、とても上手でたちまち刈られて
しまっていました。


 LAKE・VIEWのアルパカさんたちも、これで
涼しい夏が過ごせそうですね。

 帰り道、子供たちが書いた七夕飾りにこんな短冊を
見つけました。
 「いい人になれますように」・・・・・
 すてきな願い事ですね。




2015年7月4日土曜日

舞子さんのかんざしのような「シモツケソウ」



 今年も、シモツケソウが咲きはじめました。


 シモツケソウのシモツケとは、
下野のことで、この植物は栃木県に
ゆかりの名前がつけられていて、特に
親しみを持つ花です。


  小さな花から、たくさんの雄しべが出ていて
この花を見る度に、いつも舞子さんのかんざしの
ようだと思います。

 花ことばは、控えめなかわいさ・穏やか・純情
ということですから、舞子さんのイメージにも
ぴったりですね。


2015年7月3日金曜日

蓮の花



 うちから、車で20分ぐらいの近くに、
蓮の花が咲いているところがあると聞き、
早速見に行ってきました。


♪はちす咲くあたりの風のかほりあひて
       心のみづを澄す池かな
                       定家

 これは、藤原定家が詠んだ歌ですが、蓮の花の
特徴を上手く捉えているなあと思いました。
 
 蓮の花が咲いているのを見るのは、
早朝が良いということですが、
わたしが行ったのは、昼少し前の時間でした。
 でも、まだ少しだけ咲いていましたので、
ラッキーでした。


蓮は、原産はインドで、日本には中国から
2000年以上も前に、渡来したということです。

 花びらが少し開いた、咲きかけもすてきです。


 それにしても、泥の中で、香りのよいこんなにも
きれいな花を咲かせる蓮って、ロマンを感じます。







 

2015年7月1日水曜日

日本の原風景



 日本のふるさとの原風景のような、なつかしい風景に、出会ってきました。


 そこは、福島県の南会津の前沢にある曲家集落でした。

 


 冬には、雪が1,5mも積もる豪雪地帯で大きな町からも遠く、それゆえか、曲家が集落として残っていたのでした・・。




 
 梅雨の晴れ間の午後でしたが、訪ねる人もまばらで、辺りはシーンとして、アキアカネだけが、いっぱい飛んでいました・・。





 集落の外れの橋のたもとに、菅笠を被ったおじいちゃんが休んでいらしたのですが、風景にぴったりと、とけ込まれていました。




 ここを訪ねたのは2度目でしたが、ここだけは、いつもゆったりとした
時間が流れているようで、ほっとする別天地のような空間でした。