2020年11月22日日曜日

音楽・わたしの好きなCD「ザ・ベスト・オブ・マリア・カラス」



 きょうは、朝から、「ザ・ベスト・オブ・マリア・カラス」のCDを、一日中聴いていました。

 カラスの声はもともとは、メゾ・ソプラノだったそうですが、超人的努力でハイ・ソプラノまでの音域や、コロラトゥーラの技巧を獲得したとCDの解説に書いてありました。聞いているとぞくぞくとしてしまうような、あのハイ・ソプラノの軽妙な歌い方には、しびれてしまうのですが、その陰には、やはりすさまじい努力があったのだと理解できました。



 そういえば、日本文学者の故ドナルド・キーンさんもカラスのファンでした。「マリア・カラスを偲ぶ」というエッセイを書かれています。彼は1952年に初めてロンドンのコベントガーデン歌劇場でカラスの「ノルマ」をご覧になられたとのことです。その頃のカラスは、太めのからだつきだったそうですが、歌い始めると声が苦もなく流れでて、下降するときの高音はぞくぞくするほどだったとのこと・・。それ以後、すっかりカラスのファンになられたようです。

 その4年後の1956年にニューヨークのMET(メトロポリタン歌劇場)で、またカラスの「ノルマ」をご覧になられたキーンさんは、このような興味深い感想を書かれています。



 METでのカラスは以前の彼女と違い、ダイエットでほっそりとやせて美しくなり、演技にも優雅さが満ち溢れていたそうです。そして高音域の音程を外すことがあっても、そのことが観客の次への期待への効果をあげ、さらに舞台の劇的緊張を盛り上げていたとのこと・・。

 それは、世阿弥の「花至道」によれば、芸の達人は、自らの芸を完成させた後に、観客に完璧さの「慣れと退屈」を感じさせないために、意識的に下手な技を取り込むこともあるということと同じではないかと、キーンさんは持論を書かれているのですが、納得でした。



 キーンさんは、カラスのコロラトゥーラと、リリック・ソプラノのための曲を選りすぐったアリア集だけは是非聴いてほしいと、書かれているのですが、このCDでもわたしは十分、堪能できました。

 このアルバムの中では、歌劇「ノルマ」の「清らかな女神よ」が、好きです。




 カラスは「ノルマ」を、1948年にフィレンツェで歌って以来、1965年のパリ・オペラ座での公演まで最高の当たり役として、90回も演じているとのことですが、もう伝説のオペラ歌手になってしまったのかもしれませんね・・・。

 カラスの歌声に聞き惚れてしまった秋の一日でした・・・。




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