2021年10月24日日曜日

読書・「トリエステの坂道」須賀敦子著・新潮文庫

 

 10月20日は、今年の秋2度目のしぐれの日でした。晴れた空からパラパラと雨がふり、虹も見ました。うちの庭にあるウリハダカエデの葉は、芸術的ともいえるような色合いのすごい紅葉になり、こんな感じで雨にぬれて庭に落ちていました。



「トリエステの坂道」を再読しました。須賀敦子さんのファンなので、この本は大分以前に読んでいたのですが、今回夜寝る前に読もうとベットの中で読み始めたら、いつのまにか最後まで読んでしまいました。

 須賀さんの最初の本「ミラノ・霧の風景」は、彼女のイタリアでの人生のひとこまが、部分的に書かれていただけでしたので、どのような人生を過ごしたのか、さらにこの本でパズルを埋めるようにおもしろく読むことができたからだと思います。





 最後の方のエッセイ「ふるえる手」には、須賀さんの作家としての大事な指針ともなったナタリア・ギンズブルグが書いた本「ある家族の会話」との出会いが、書かれていました。その本を須賀さんに手渡してくれたのが、ご主人のペッピーノさんだったのです。

「ある家族の会話」の中にプルーストに夢中になる母やきょうだいの話が出てくるのですが、このエピソードからナタリア・ギンズブルグの文体の秘密を須賀さんは、このように推察なさっています。

 「好きな作家の文体を、自分にもっとも近いところに引きよせておいてから、それに守られるようにして自分の文体を練り上げる」             引用217p

 ナタリア・ギンズブルグは、プルーストに影響を受け、須賀さんはギンズブルグに影響を受けたようですね。

 たしかに、ナタリア・ギンズブルグは、プルーストの「失われた時を求めて」を、イタリア語に翻訳していますし、須賀さんは、ナタリア・ギンズブルグの「ある家族の会話」を、日本語に翻訳なさっていますから。



 須賀さんにとって、ナタリア・ギンズブルグの「ある家族の会話」は、須賀さんが「須賀敦子」になるための、かけがえのない大事な出会いだったようです。

 




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