2022年4月15日金曜日

読書・「詩歌博物誌 其之弐」 塚本邦雄著・彌生書房 ・・・「はるあららぎ」とは何の花?

 


 2,3日前から、「シュンラン」が咲き始めました。このシュンランは、我が家の東の土手の木の下に落ち葉に埋もれて自生していたのを、この場所に植え替えたものです。例年ですと3月末ごろに咲くのですが今年は、少し遅いようです。




 塚本邦雄さんの「詩歌博物誌 其之弐」を読みました。この本は友人からのお奨めでしたが、もう絶版になっており、古本屋さんからネットで購入したものです。植物や詩歌に興味があるわたしにとっては、好きな本の1冊になりました。

 塚本さんはこの本のモチーフとして、加藤三七子さんの俳句とともに、植物などを紹介なさっているのですが、「春蘭」にはこんな句が添えてありました。

 「春蘭を移し植ゑたる庭の闇」・・・加藤三七子 

 加藤三七子さんの俳句は、初めて知ったのですが、「春蘭と庭の闇」の言葉の対比がおもしろいと感じました。加藤三七子さんの代表句を調べてみましたら、「抱擁を解くが如くに冬の濤」というすてきな句がありました。塚本さん好みの俳句のようにも思えました。

 斎藤茂吉の春蘭の出てくるこんな短歌も紹介なさっています。

「わが友の春蘭(はるあららぎ)を描くそばにいでゆを出でし吾は真裸(まはだか)」

                               斎藤茂吉

 斎藤茂吉は、春蘭を「はるあららぎ」と読ませているのですが、塚本さんは、失礼を百も承知でとことわりながら、こんな短歌にしたらと提案なさっています。

「わが友の春蘭(しゅんらん)を描くかたはらに温泉(いでゆ)出でたるわれ真裸(まっぱだか)」

 春蘭を「はるあららぎ」と詠んだ茂吉の歌の本歌取りのようで、しかも歌人塚本邦雄の短歌にすっかりなっていると思いました。

 春蘭は、かすかなしかし凛とした香りがあると塚本さんは書いていらしたので、わたしも早速、確かめてみました。

 やはりほんのかすかにですが、あえやかな香りがしました。





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