2020年1月18日土曜日

新訳でプルーストを読破する14・最終回



 先日の1月11日に立教大学で開かれた「新訳でプルーストを読破する」というセミナーに参加してきました。今回は、「失われた時を求めて」全14巻読破の記念すべき最後の14回目で、翻訳者の吉川一義先生のレクチャーがあり、お会いできるというのが、楽しみでした。わたしは今回も含めると9回の参加でした。
 


 吉川先生にとってのプルーストとは、一言でいえば、
「繊細な感性に透徹した論理をそなえる」ということだそうです。




 また、吉川先生は「翻訳に際して難しかったことは何だったのでしょうか?」という読者の質問に、原文の音の響きと答えていらっしゃいました.
 例えば、同じ音の繰り返しが出てくる7巻の538pにあるサタンですが、吉川先生の訳は・・・
・-・-・-・-・-・-・
「ジュールはただいま戻りました、公爵さま。まもなく侯爵さまのご臨終かと、みなさま嗟嘆(さたん)のごようす。」
 「おお!生きているのか」と侯爵は言って、安堵のため息をついた、「嗟嘆(さたん)、嗟嘆(さたん)ってサタンはお前だ。
・-・-・-・-・-・-・
 改めてこの部分を教えていただくと、なぜかクスリと笑ってしまったのですが、同じ音の「嗟嘆」と、「サタン」を掛けて使われていて、お見事だと思いました!!!


 吉川先生は、この長い10年もかかったとおっしゃる連日の翻訳の間、ひそかにこのようなユーモアのある翻訳をなさって楽しまれていたのですね。
 
 吉川先生の、お好きな1ページは、153pの
「おのが墓へと突っ走っていたのである。」
という言葉だそうです。ここを選ばれたのは、先生のユーモアも感じたのですが、改めて考えてみると、人生の真実で、わたしたちはみなそうなのですよね。



それにしてもこのような長い小説をコツコツと10年もの間、翻訳してくださった吉川先生には、感謝いたします。
 レクチャーのあと、懇親会もあり、いままでにレクチャーをしてくださった講師の方々もいらしていて、和やかな会でした。
 このセミナーに参加して、よかったことのひとつは、趣味がプルーストとおっしゃるような方々と知り合いにもなれたことでした。




 それに、このプルーストのセミナーを企画し、毎回すばらしい司会をしてくださった立教大学教授の坂本浩也さんにも感謝いたします。
 ありがとうございました。

 そして、吉川先生もおっしゃっていたように、何よりもプルーストに感謝です!!!





 







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