2023年8月15日火曜日

読書・「言葉と人間」加藤周一著・朝日選書

 

 コバギボウシの花が暑さにもめげずに咲いています。ひょろんと伸びた茎の上に数個の蕾をつけ、ラッパ状の花を、下から順に咲かせているのですが、うすむらさきの色が涼しげです。花は一日だけ咲いてすぐにしぼんでしまう一日花です。



 加藤周一さんの本「言葉と人間」を、読みました。加藤周一さんの本は、「日本文学史序説上・下」そして自伝の「羊の歌」と「続羊の歌」、「読書術」などが本箱にあるのですが、いずれも個性的なそれぞれ異なる知人に薦められて読んだ思い出のある本です。この本もある知人のお奨めでした。

 この本はもう絶版になっていて、古本で購入したものです。

 加藤周一さんは、1975年から76年にかけて米国に住んでいらしたのですが、その時の読書のことを、毎週朝日新聞に連載されていて、本にまとめたのがこの「言葉と人間」とのこと。加藤さんの読書は、さすがに多岐にわたっていて、見識の広さに溢れており、それぞれの章をおもしろく読むことができました。



 わたしが特におもしろいと思ったのは、プルーストの戦争文学に関する記述や、吉田秀和全集の吉田秀和さんについての絶賛の記述、そして万葉集についての記述などでした。

 万葉集は、わたしにとっては、学生時代に学んだこともあるなつかしい書物で、加藤さんの見識を興味深く読みました。加藤さんは7,8世紀の日本の文化の表現としてどう感じたのかと、新しい側面から分析なさっているからです。

 その側面とは、仏教の影響がみとめられる歌が少ないこと。日本人の感情生活が高度に洗練されていたこと。短歌の形式が俳句が成立するまでそして俳句もふくめて千年以上も続いたこと。などと書かれているのですが、この万葉集の分析などは、さすが「日本文学史序説」を書かれた加藤さんならではのことかなと思ったのでした・・。



 最後の章で加藤さんは、書物は言葉であり、言葉は時代とともに移る。そしてその著者は、人間であり、その人間には時代を超えて変わらない面があるだろうと書かれているのですが、これがこの本のキーポイントなのかなと思いました・・。




  






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