2024年4月6日土曜日

読書・「鴎外の坂」森まゆみ著・中公文庫

 

  4月4日は、二十四節気では、「清明」でした。清明とは、暦を調べてみましたら、「万物が新鮮になり桜花爛漫」と書いてありましたので、やはりその通りの良い季節になったのだと実感しました。

 わたしが住んでいる高原では、桜はまだまだですが、一昨日の散歩では、うすむらさきの春の妖精、「キクザキイチゲ」が春風にゆれて咲いているのを見つけることができました!!!

 清明の日に可憐に咲いていた「キクザキイチゲ」見惚れてしまいました!



  森まゆみさんの書かれた「鴎外の坂」を、読みました。森まゆみさんのお名前は、須賀敦子さんの著書「本に読まれて」の中の須賀さんらしいユニークな書評で知っていたのですが、そのときのご紹介の森さんの本は「抱きしめる、東京 町とわたし」でした。

 今回はその本ではなく、「鴎外の坂」を選んでみました。

 わたしにとってなじみのある東京の坂といえば、住んでいたことのある文京区のなつかしい「胸突き坂」です。名前のようにかなりきつい坂ですが、坂の途中には、芭蕉ゆかりの関口芭蕉庵もあり、近くには幽霊坂という名前の坂が2つもありますので、文京区は坂の多い町のようです。



 森さんは、鴎外の終の棲家となった観潮楼の近くのお生まれで、地域雑誌「谷中・根津・千駄木」の編集もなさっていて地域にくわしく、団子坂はもとより、三崎坂、三浦坂、S字坂、無縁坂、芋坂、暗闇坂、などさまざまな坂をご存じなので、鴎外も歩いたであろう坂に親近感を抱かれ、鴎外の坂という題名になさったのかなと思いました。

 森さんは、鴎外の著書や、鷗外のご家族が書かれた本などから、足で歩いてさまざまな検証をなさり、彼女の言葉で書かれているところに、好感を持ちました。




 わたしは、この本の「はじめに」の最初のところが、特に好きです。

「私は昭和二十九年、文京区駒込動坂町三百二十二番地に生まれた。森鴎外がその半生を暮らした本郷区駒込千駄木町二十一番地から歩いて十五分ほどのところである。」

                     引用7p

 森まゆみさんの評伝の目的が感じられ、わくわくしました。評伝はドナルド・キーンさんの「正岡子規」のように、研究者としてのお立場からのものと違い、親しみやすさを感じたからです。森まゆみさんの人生とシンクロする場面では、彼女の人生観も少し見え、お人柄も感じられた評伝でした。

 読み終えた後、団子坂の上にある「文京区立森鴎外記念館」をまた訪ね鴎外の本を再読してみたいと思ったのでした。







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