2019年12月1日日曜日

読書・「失われた時を求めて」岩波文庫・吉川一義訳の全巻読了!!!




 11月29日、吉川一義さんの訳の「失われた時を求めて14」岩波文庫版を、読み終えました。これで、「失われた時を求めて」の全巻読了は、3度目になりました。この岩波文庫版の最後の巻の14は、2019年11月に、出版されたばかりですが、翻訳者の吉川一義さんのご努力に感謝したくなりました。ありがとうございました!




 この最後の14巻は、いままでの物語の集大成で読み応えがありました。主人公(プルースト)がこれから書こうとしている文学作品の素材は、自分の過去の人生にあるというのを悟り、いよいよこれからとりかかろうとしているところで、終わっています。





  プルーストを読みながら、わたしはいつも、プルーストの持論である「本を読むということは、自分を読むということ。」を、実感してきました。プルーストの読書論ですが、好きな言葉です。

  読書はまた、わたしにとっては、とても楽しいことで自分を知るもっともよい機会でもあります。





 プルーストの「失われた時を求めて」を、最初に全巻完読したのは、もう20年以上も前の井上究一郎さんの訳でしたが、最初の1巻のスワン家のほうへを、読み終えたときの感動は、まだはっきりと覚えています。わたしが今まで読んでいた本は何だったのか、そしてもうこんな本を読んでしまったのならば、ほかの本は読めなくなるのではというほどの衝撃を受けたのでした。



井上究一郎訳・ちくま文庫・全10巻


 次が鈴木道彦さんの訳でしたが、明快で読みやすい反面、どうしても井上さんのあの独特のプルーストの訳文がなつかしく感じることもありました。鈴木道彦さんは、「いったんプルーストの世界を知ると、人は明らかに読む前と違うにんげんになる。」と、カルチャーラジオの【プルースト「失われた時を求めて」を読む】というテキストで言われていますが、わたしも頷ける言葉です。
 


鈴木道彦訳・集英社文庫・全13巻


 そして、今回の3度目が岩波文庫の吉川一義さんの訳でしたが、彼の翻訳本のよいところは、豊富な図版や注が掲載されていて、同じページのところですぐに見れるというのは最高に便利で、知的好奇心を満たされるという利点があったことです。


吉川一義訳・岩波文庫・全14巻


  わたしが、プルーストのこの本の舞台にもなっているフランスのイリエ・コンブレーの家を訪ねたのは、30年近くも前のことでした。
 

イリエ・コンブレー・プルースト記念館

  
プルーストの本はまだ完読もしていないころだったのですが、スワンが訪ねてくるときになる呼び鈴が、庭にある裏の門扉に付いていたのを、はっきりと覚えています。後で付け替えたのかもしれませんが、ハンドベルのような形でした。




 今回読んだこの最後の巻の14にも、庭の門扉についている呼び鈴のことが出てきます。あの小さな呼び鈴のひびきと書いてあるのですが、その呼び鈴の音は主人公が子供のころに聞いた音色であり、あんなにも遠い過去のものでありながら著者の内部にいつも存在していて、それは膨大な時の広がりを感じさせる音なのでした・・。





 あの30年近くも前にイリエ・コンブレーでわたしが見た呼び鈴は、わたしの人生のその後の30年ぐらいにもわたるプルーストを読むという長い豊饒な読書の始まりの呼び鈴だったのかもしれません。

 プルーストの「失われた時を求めて」は、何度読んでもそのたびに、新発見があるすてきな本になりました。そしてこのような本にめぐりあえたことに、いつも感謝しています。

 

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