2017年7月11日火曜日

モーパッサンの「女の一生」



 モーパッサンの「女の一生」を、初めて読んだのは、高校生の頃でした。
 担任だった女の先生が、この本を人生のいろいろな年代で読むと面白いと
薦めてくれたのを覚えています。


 その後、30代の初めの頃、モーパッサンの住んでいたエトルタの家を訪ねた
ことがありました。

 モーパッサンの母は、離婚してこの別荘に2人の息子を連れて住むようになった
ということでしたが、昔のままに保存してあり、モーパッサンが執筆した机なども
ありました。 

 その訪問の後で読んだ「女の一生」は、出てくる地名などにも馴染みができ、
ノルマンディ地方への愛着のようなものさえ感じられたのを覚えています。

 わたしが現在持っている「女の一生」の本は、2冊ですが、小説の最後に出て
くる小間使いのロザリの言葉が好きなので、比べてみました。

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「なんのはや、世の中というものは、そんなに人の思うほど
 善くもなし悪くもなしですわい。」
        引用  「女の一生」モーパッサン 杉捷夫訳 岩波文庫 338p



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「世の中って、ねえ、人が思うほどいいものでも悪いものでも
ありませんね」
        引用「女の一生」モーパッサン 新庄嘉章訳 新潮文庫 445p


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 主人公の貴族の娘ジャンヌは、夫の浮気や放蕩息子で苦労します。
そして、希望を失いかけた人生の晩年に孫(母親を亡くした息子の子供)を、
育てることになるのです。
 その時に、ジャンヌに、昔は小間使いで乳姉妹だったロザリがかけてあげる
言葉がこれなのでした。
 「世の中は人が思うほど、良くもなく悪くもない」

 モーパッサンは、小説の最後に、この言葉を書くために、「女の一生」を
書いたのだと実感します。

 プルーストを読んでしまった現在は、全部読み通すのが苦痛になるほどで、
やはりプルーストのすごさを改めて感じました。

 モーパッサンは、1850年生まれで、プルーストは、1871年生まれと
わずか、21の歳の差なのですが・・・。

でも、わたしにとって、こういう人生の思い出になるような一冊がある
というのは、幸せなことかもしれません。



















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