「ガドルフの百合」という宮沢賢治の童話が
あるのですが、ご存じでしょうか・・・。
この百合は、ヤマユリのことです。
「ガドルフの百合」は、短い童話ですが、こんな話しです。
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ガドルフという旅人が、突然の激しい雷雨にあってしまい
雷雨をさけるため、大きな真っ黒い家を見つけ玄関に
駆け込みます。

ガドルフは声をかけるのですが、どうやら無人の
家のようでした。
家に入り濡れた体を拭いて、いなずまがむらさきに光る
外を見ますと、10本の美しい白百合が、雷に憤って
咲いているのを見つけます。
また、稲妻が走り、一番背の高い百合が一本
あまりの憤りのために、雷に打たれて折れてしまったのを
見てしまいます。
ガドルフは、自分の恋は、あの百合の花と思っていたので
がっかりして、疲れのために寝てしまいます。
その夢の中で、二人の男性が取っ組み合いの喧嘩を
しているのですが、自分のところにころがり落ちてくるところで
目が覚めます。
それは、大きな雷でした。
やがて雷も遠くに行き、窓の外を見ると、残りの9本の百合は
凛として咲いています。
そして、木のしずくがさそりの赤い光をうつして、
ばら色に光っているのを見つけます。
それを見てガドルフは、「おれの百合はかったのだ!」
と思い、また次の街を目指して、旅たつのでした。
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賢治は、この童話を作ることになったモチーフとして、
18歳のころに、こんな短歌を作っています。
♪いなびかり
またむらさきにひらめけば
わが白百合は
思い切り咲けり
賢治は、盛岡中学を卒業したころに、
鼻炎の手術のため岩手病院に入院するのですが、
その時に、看護婦さんに初恋をします。
賢治はもちろん生涯独身でしたので
この初恋は実らず、失恋してしまいます。
短歌の中でわが白百合と詠っているのは
初恋の看護婦さんのことと思われます。
ヤマユリは、賢治の初恋の花だったようです。
宮沢賢治の弟の宮沢清六さんの書かれた
「兄のトランク」を、久しぶりに読んでみますと
やはり、このことが書かれていました。
賢治が盛岡中学を卒業した後、蓄膿症の手術を
受けるために、岩手病院に入院したとき、原因不明の
熱が続き、発疹チフスの疑いで、2か月も入院したそうです。
そのときに、同じ年の看護婦に秘かに心を引かれた
と、書いていらっしゃいます。
賢治の初恋は、ヤマユリのような女性だったので
しょう。
ヤマユリは、毎年この季節になると、家のまわりの
あちこちにたくさん咲くのですが、これからは、賢治の
初恋を思い出しそうです。
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