2020年9月17日木曜日

アポリネールの猫の詩

 

 わたしが持っている本の中でいちばん美しい装丁の本は、「アポリネール詩集」です。アポリネールの詩は、窪田般彌訳、出版社は、ほるぷ出版。古本市に行ったときに、あまりにも美しいので一目で気にいってしまい買った本でした。



 この本は、ピエール・カルダンの装幀・装画で、動物詩集には、R・デュフィの挿画が入っている豪華版です。アポリネールといえば、「ミラボー橋の下をセーヌが流れる・・」ではじまる詩「ミラボー橋」があまりにも有名ですが、わたしは、動物詩集の中の「猫」が、大好きです。

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


「猫」
             アポリネール     (窪田般彌訳)

僕は家に持ちたい、

分別のある女房一人と、

書物のあいだを通り抜ける子猫一匹、

それに、彼らなしには生きていけない

いつもそばにいてくれる友達数人。

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
                引用 アポリネール詩集 83p
                    窪田般彌訳 ほるぷ出版


              R・デュフィの挿絵「猫」

 アポリネールは、1880年にローマで生まれていますが、母はポーランドの亡命貴族で父はモナコの司教だったそうです。19歳で母といっしょにパリで生活するようになったのですが、生活は苦しくそんな中で、詩をかき、友人を作り恋をしたようです。

 彼はフランスを愛する気持ちから帰化し、戦争(第一次世界大戦)に行くのですが、戦傷を受けて戻り、重い傷が癒えてから再び詩を作って活動していました。

 そんな中、1918年にジャクリーヌと結婚したのですが、その後わずか7か月後の11月に、スペイン風邪で亡くなってしまいました。



 この猫の詩は、分別のある妻と、書物の間を通りぬける子猫一匹、それに彼らなしには生きていけないような友達数人・・・・・それらを家に持ちたい!とうたっているだけなのですが、詩人の気持ちが、なぜかよくわかります。そして、子猫が書物の間を通り抜けるシーンまでが目に浮かんできて、読むたびにいつもキュンと感じてしまうのです。

 アポリネールのささやかでしあわせな人生観で満ち満ちているような詩で、わたしは、大好きです。




0 件のコメント:

コメントを投稿