久しぶりにすてきな映画を観ました。
ジョアンナ・ホッグ監督・脚本の「家族の波紋」
です。
ウェジウッドのパウダーブルー
映画の中では、海の色と、ロイヤルダルトンの
食器の色のブルーの話が出てきます。
この画像は、空のブルーと
ウェジウッドのパウダーブルーの色を
比べてみました。
主人公のエドワードは、ボランティアのために
アフリカに11か月もの間行くことになり、
その前に、母のパトリシアの発案で、姉のシンシア、
料理人のローズ、絵の教師のクリストファーと
イギリス南西部の島で、2週間過ごすのですが
その時の家族の生活を描いています。
まず、最初に思ったのは、映像がすてきなこと
でした。
別荘内部のインテリアの壁のうすいブルー、
カーテンや扉などのオフホワイト、
考え抜かれたような小物類。
イギリスとは思えない南の島の風景、
特に、海の色や亜熱帯植物のしげる庭も
魅力的でした。
イギリス南西部にあるシリー諸島という設定
ということですが・・・。
カメラは、固定されていて、登場人物の会話が
じっくりとこちらの耳に入ってきます。
特に、エドワードのクイーンズイングリッシュでの
会話、BGMのように流れる野鳥のさえずりが
すばらしくすてきで、耳に残りました。
この島は、実際にバードウォッチングの
メッカだそうです。
エドワードのこれからの生き方の心構えを
さりげなく話してくれる絵画教師クリストファーの
話もこころに残りました。
クリストファーは、エドワードに何をするのかは
問題ではない、強い信念を持つことが大事と
話してくれます。
絵画教師役のクリストファーは、実際にも俳優では
なく絵かきということですが、彼の抽象画に対する
薀蓄もとてもイギリス的に聞こえました。
というのは、ロンドンの美術館などに行くと、画の前で
よくこういう会話をしている人たちを見かけたからです。
抽象とは、はぎおとして簡素化すること。
そして、その簡素化した中に自分の思いを
あらわすことが大事・・。
クリストファーの話です。
映画の設定として、
絵を教師について習う母が出てくるというのは、
エドワードの英語の発音や、
料理人を別荘に連れてくるということといっしょに
彼等家族は、イギリスの階級社会の上にいるのだと
よくわかります。
エドワードの、料理人ローズに対する思いやり、
いつまでも家族のもとに来ない父の存在にいらだつ母
姉は、出先のレストランでの料理に対する怒りから
感情を爆発させてしまいます。
そして
みんなに広がるきまずさの波紋・・・
などなど、どこでも見られるような家族の日常の波紋を
さりげなく上手に描いています。
あまり大きな出来事もない、でも小さな波紋はある
家族の日常の2週間の生活を描いたこの作品を観ていると、
小津安二郎監督の「東京物語」を思い出してしまいました。
もしかしたら、この映画の監督は、
小津安二郎の映画のファンだったのかも・・
と、ふと思いました。
良い映画を観るのは、しあわせですね!