2020年6月30日火曜日

読書・「シェリ」コレット作・工藤庸子訳・岩波文庫




  コレットの「シェリ」は、だいぶ前に読んだ本で、本箱に入れたままでした。最近、プルーストやアンドレ・ジッドもコレットの作品を褒めていたことを知り、また読んでみました。




 読み直してみると、かなりおもしろく一気に読んでしまいました。

 50歳を迎えようとする元高級娼婦のレアと、息子ほどの年齢差のあるシェリ。
 レアはまだまだ魅力的で、シェリは若くて美男子・・。
 そんな二人の恋が描かれています。

 コレットらしく物語の設定はとてもフランス的で、恋を主題に書いているのですが、レアの心理や行動、そして会話も巧みに描いていて、最後にはレアがかっこよく二人の恋を終わらせています。




 今回気づいたのは、レアやシェリがつけている香水や、リラの花などの香りの感覚、

 そして、寝室のカーテンをバラ色に染めている光は、シェリの絹の純白のパジャマもバラ色にして、という表現などからの色彩感覚・・。
 
 などなどのコレットの感性は、とても詩的に表現されていて、見事だと思いました。




 この作品でコレットは、文学作品の作家としてフランスで認められたとのことを、訳者の工藤庸子さんの解説文で知ったのですが、見事な解説文を書かれています。
  作品と、解説文で2度楽しめた本でした。

 プルーストが褒めたのは、コレットのフランス文化ともいえる感性だったのかしらと、ふと思いました・・。
 


 

2020年6月16日火曜日

読書・「音楽の光と翳」 吉田秀和著 中公文庫



 今朝は6時前に目が覚めました。窓を開けると梅雨の晴れ間の青空が広がっていて、空気がさわやかです。カッコーの声も聞こえすばらしい6月の朝でした。

 少し朝の読書をしようと思い、最近またよく読むようになった吉田秀和さんの本を無作為に選び、開いたページを読んでみると、「菩提樹の花の香り」というエッセイでした。



 吉田さんがベルリンで奥様と一年ほど暮らされていたときに、奥様が病気で入院なさったことがあったそうです。お見舞いに毎日行かれていてその帰りのある日、駅前の広場でリンデ(菩提樹)の大木が真っ白に花開き、花の香りがあたり一面にただよっていた光景に遭遇なさったとのこと・・。



 吉田さんはここで、リンデを歌ったマーラーの歌曲をご紹介なさっています。この歌曲は、詩人リュッケルトの詩に曲をつけたもので、花の香りを歌ったものでは、これ以上の作品は知らないと、書かれています。

 この歌を聴いたことがない人はとてもしあわせだとも、書かれていましたので、そのしあわせな一人であるわたしは、早速YouTubeで検索して聴いてみました。
 クリスタ・ルードヴィヒという女性が歌っていて、吉田さんのおっしゃるように、「ただ穏やかで、繊細で純粋な」歌曲でした。

 6月のさわやかな朝に、こんな静謐な歌を聴けたのは、やはりしあわせなひとりになりました。

 ここに住むようになってから、花の香りで気がついたのは、クズの花といまが満開の、コアジサイの花です。コアジサイに香りがあるとは、昨年に知ったばかりでした。




 コアジサイは、この辺りではどこにでも咲いていて、梅雨を知らせてくれる花ですが、早速我が家の庭に咲くコアジサイをパチリと写してきました。




 むらさき色の茎に、水色の繊細な花を咲かせるコアジサイは、風が通り過ぎると、さわやかにやさしく香ったのですが、吉田さんに教えていただいたリンデの歌曲のイントロの部分、♪わたしはほのかなリンデの香をかいだ・・が聴こえてくるようでした・・・。
 

 

2020年6月13日土曜日

ニガナは、ほんとうに苦いのかな?




 散歩していると、道の両側にニガナの黄色い花が、たくさん、咲く季節になりました。ニガナは、どこでも見かける花ですが、この花を見るといつもほっとするのは、なぜでしょうか・・。




 ニガナは、花びらが5枚か6枚のものをいい、7枚から12枚のものは、ハナニガナといいます。

ニガナは、花が終わって実をつける頃は、こんな感じに姿を変えてしまうのですが、幾何学模様のような丹精さに、思わず見とれてしまうほどすてきです。




 この花は、ニガナという名前がついているので、たぶん苦い味がするのだろうとずっと思っていたのですが、きょうは長年の疑問を確かめてみようと思い、葉の部分を少し切りとって舐めてみました!!!

 結果はやはりかなり強い苦みを感じましたので、やっぱりこの名前の通りに、苦菜(にがな)でした。茎も、切り取りますとタンポポのように白い乳液のようなものが出て、少しネバネバしました。

 白い花もあり、こちらはシロバナニガナと名前が付けられています。白花は数が少なく、ようやく見つけた花です。




 ニガナの花言葉は、「質素」ですが、黄色よりもこの白い花の方が、よりつつましく花言葉のイメージには似合っているように感じます。

 白いシロバナニガナの花も好きなのですが、やはりニガナは、こんな風に、黄色に群れて咲いているのが、いちばん好きかもしれません。