12月も半ばになりました。我が家も、クリスマスの飾り付けをし、いつものようにクリスマスカードを2通だけフランスの友人に送ったところです。
飾りのメインは、例年のようにわたしの手作りのクリスマスツリーなのですが、今年は小さなテディベアも参加させました。
この小さなテディベアは、以前に知人がわたしのために作ってくれたもので、足の裏にわたしの名前が書いてある思い出のベアーです。
このテディベアをプレゼントしてくださった方は、病気や離婚など人生の困難を乗り越え、元気に過ごしていらっしゃるのですが、わたしはいつも秘かにエールを送っています。
クリスマス前のこの時期になると、カポーティのクリスマスの本が読みたくなると、2014年の12月のわたしのブログに書いたのですが、その時は「クリスマスの思い出」でした。
今年もやはり、彼の本が読みたくなり、今回は「あるクリスマス」を、読んでみました。カポーティが、父と過ごした最初で最後のクリスマスの思い出です。
村上春樹さんの訳で、山本容子さんの銅版画の挿絵が載っている大人の絵本のようなすてきな本なのですが、やはり胸きゅんの物語でした。
カポーティは、母がまだ15,6歳の頃に、父と出会って生まれているのですが、母は若すぎたため育てることができずに、アラバマの田舎の実家に預けられ、そこで育っています。そこでの生活は、スックという60歳を越えた女性と、犬のクイニーとのしあわせな暮らしでした。
6歳の時に、カポーティは生涯に一度だけ父の住んでいたニューオリンズまでクリスマスを過ごすために出かけたのですが、その時のことがこの本に書かれています。
父の家でバディー(カポーティ)は、プレゼントとしてペダルで漕ぐ飛行機を買ってもらいます。そして、父との別れの日、父は育てられなかった後悔でいっぱいになり、酒を飲んでよっぱらい、バディーに「どうか愛してると言ってくれ」と頼むのですが、バディーは言えずに別れてしまいます。バディーはアラバマに戻った後、父にお礼の手紙を出したのですが、父が亡くなった後、父の金庫の中にその手紙が大事にしまわれていたのを、大人になってから見つけたのでした。
そこでこの物語は、終わっています。
カポーティの人生を考えながらこの手紙を読むと、胸が締め付けられるような気分になります。最後のページからの手紙の英文と、村上春樹さんの訳文を引用させていただきます。
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Hello pop
hope you are well I am
and I am learning to pedal
my plain so fast I will
soon be in the sky so
keep your eyes open
and yes I love you
Buddy
「とうさんげんきですか、
ぼくはげんきです、
ぼくはいっしょうけんめいペダルこぐ
れんしゅうしてるので、
そのうちにそらをとべるとおもう、
だからそらをみていてね、
あいしてます、
バディー」
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引用 「あるクリスマス」トルーマン・カポーティ著 村上春樹訳 文藝春秋71p
カポーティが父と別れた日に、父が言ってくれと願っていた言葉「あいしてる」が、この手紙には、書かれていたのでした。
カポーティの父は、この作品が書かれる前年に亡くなり、彼自身もこの作品を書いた翌々年に亡くなっているそうです。
彼はこの本をいっしょに暮らすことのなかった父へのオマージュとして、書いたのだと思いました・・。