きょうは、激しい夕立があったのですが、
雨上がりの林の下に、朱色のフシグロセンノウが
咲いているのを見つけました。
わたしはこの花を見る度に、いつも思い出して
しまうお話があります。
それは、日本の名随筆の「花」に書かれていた
岡野弘彦さんの「ふしぐろせんのう」という話しです。
岡野さんのお母様が、まだ7,8歳のころだったそうです。
父親に連れられて実家の持山に入り、 うっそうとした
暗い杉林を二人でどこまでも歩いて行くと、崖がありました。
下を見ると谷川で、若く美しい女の人が洗濯をしていました。
その女の人は、冷たく透き通った水の中で、赤い花模様の
着物を洗っていたのですが、その指先までも見えたそうです。
振り返って顔を見せて欲しいと、じっと待っていたのですが、
突然、山の上の方で父の呼ぶ声が聞こえました。
はっと我に返ってよく見ると、もう、女の人の姿はどこにも
見えなかったということです。
岡野さんのお母様の母上は、お母様が6歳のときに
亡くなられていたので、かなしい白日夢を見たのだろうと
岡野さんは書かれていました。
そのお母様が好きだった花が、このフシグロセンノウ
ということです。
フシグロセンノウは、林の下の緑の中に咲く
朱色の花なので、朱色が目に染むほど鮮やかです。
今年は例年になく早く咲きました。
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フシグロセンノウは、
ナデシコ科センノウ属の花で
山地の林下に生える多年草。
名前の由来は
節が紫黒色なのでフシグロ
嵯峨の仙翁寺で見つかったので
センノウ
あわせて、フシグロセンノウということです。
分布は、本州・四国・九州
花期は、7~10月
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