「海からの贈物」リンドバーグ夫人著 吉田健一訳・新潮文庫を、読みました。
この本は、何度か読んでいるのですが、今回、あの吉田健一さんの訳だったのだと改めて気づき、うれしくなりました。吉田さんのファンだからです。
著者のリンドバーグ夫人は、史上初の大西洋単独横断飛行をしたチャールズ・リンドバーグが夫で、彼女自身も飛行家であり、大戦の後、フランスやドイツで罹災民の救助事業をした女性ということです。
リンドバーグ夫人は49歳のときに、ある島でひとりで休暇を過ごすのですが、そのときの自分自身についての人生の対話を本にしたものです。
彼女は、まず浜辺で拾ったほら貝を見つめることから、思索を初めています。
ほら貝の簡素な美しさからは、
自分の生活の不必要なものを捨てること
どれだけ少ないものでやっていけるのか
などを考え
つめた貝
日の出貝
牡蠣
など、次々に貝を見つめることから思索を広げていくのです。
牡蠣のところでは、人生の午後には、知的な精神的な活動に時間をさいて過ごすことができると書いているのですが、わたしも、実感としてよくわかります。
最後に自分の価値の概念が、
質ではなく量が
静寂ではなく速度が
美しさではなく所有欲が
となってしまわないようにするのには
どうすればよいのか・・。
と考えます。
そして、
考えた結論を後で思い出すために、
拾った貝柄を持ち帰る
というところで思索は
終わっています。
彼女は、
自分の人生の価値の基準を
量ではなく、質
速度ではなく、静寂
所有欲ではなく、美しさ
に置きたかったようです。
この本は、第二次大戦後の1955年、彼女が49歳のときに書かれているのですが、当時アメリカでは、ベストセラーになったとか。
1955年に書かれているのにもかかわらず、現代のわたしたちにも訴えるものがあるのは、名著なのだと思いました。
人生の価値は、量ではなく、質
速度ではなく、静寂
所有欲ではなく、美しさ・・・・・
すてきな思索です・・。