10月6日、夏の名残りの陽ざしが残る3連休の初日、「新訳でプルーストを読破する」第7回「ゲルマントのほうⅢ」に参加してきました。
今回の講師は、やさしい語り口が印象的だった絵本作家の高楼方子さんでした。
高楼さんは、
「プルーストの本は、底なし沼から金貨がザクザク」
というような比喩をなさっていたのですが、絵本作家らしい表現だなあと思いました。
このセミナーでは、恒例になっている参加者同士のディスカッションがあります。
今回は、大学を卒業したてのようなお若い方がたと、お話しできたのもうれしいことでした。
「わたしの選ぶ1ページ」では、その中のお一人と偶然にも同じところでした。
178p
「すべての価値は、画家のまなざしのなかに存在するのだ」
というところです。
ユリイカという雑誌の「総特集=プルースト」の中に、プルーストの死後に友人の
レイナルド・アーンが書いた追悼文が載っているのですが、その中でアーンは、こんなことを書いています。
アーンとプルーストが田舎の女友達の城館に招待されて滞在したとき、彼はプルーストが薔薇の生垣の前で立ち止まり、いつまでも薔薇をじっと見つめていたのを、目撃したそうです。
その時のプルーストの姿をアーンは、
「自然と芸術と人生と完全に交感する神秘の瞬間を目撃」
したのだと述べ、その後何度もこんな場面に遭遇したと、述懐しています。
このアーンの言葉は、プルーストの178pの
「すべての価値は、画家のようなまなざしのなかに存在するのだ」
というところと、共通するものがあるように思いました・・・。
プルーストは、まさに底なし沼から、金貨がザクザクなのですね~・・・。