2019年10月26日土曜日

読書・ウイリアム・ブレイクの詩・・いちりんの野の花に天国を見る・・・




           イギリスの詩人ウイリアム・ブレイクの詩に、こんなフレーズが出てきます。

    「いちりんの野の花に天国を見る・・」

  



 原文は、このような英詩です。
    
       ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
            Auguries of Innocence     
                         William Blake
 

                       To see a World in a Grain of Sand
                       And a Heaven in a Wild Flower,              
                       Hold infinity in the palm of your hand     
                       And Eternity in an hour.         

       ・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


 2行目の「And a Heaven in a Wild Flower,」というところを、
 「いちりんの野の花に天国を見る」と、わたしは訳したのですが、
  すてきな言葉だと思います・・・。

 とても短い詩なので、全部訳してみました。


            「無垢の予兆」   ウイリアム・ブレイク
                          (あみ訳)

            ひとつぶの砂の中に世界を                  
            いちりんの野の花に天国を見る、
            あなたの手のひらのなかに無限と
            ひとときの中に永遠をつかむ。
                      




  
 いちりんの野の花を見ると、いつもブレイクのこの詩を思い出すのですが、自然界はこんなすばらしい贈り物をわたしたちに見せてくれているのですね・・。

 そして、いちりんの野の花に天国を見るというブレイクの感性は、わたしたち日本人の感性にも通じるものがあるようにも思えます。






 ウイリアム・ブレイクは、1757年にイギリスのロンドンで靴下商の子として生まれている詩人で画家です。正規の学校には行かず、画塾や彫版師の内弟子になったり、ロイヤルアカデミーの付属美術学校で研究生になって学んだのですが、当時は詩人や画家としては生計がなりたたず、彫版師や下絵かきの仕事をして生活していたということです。

 わたしがおもしろいと思ったのは、子供時代はビジョン(まぼろし・幻影)を見る少年だったということで、妖精の絵を描いたり、妖精の詩も書いているということです。
 いちりんの野の花に天国を見たというブレイクの詩は、ファンタジーの世界とも見ることができるのかもしれません。



2019年10月12日土曜日

風景は心の鏡・・・



 以前にもこのブログに書いたのですが、わたしは東山魁夷さんが言われている「風景は心の鏡である」というこの言葉が、大好きです。先日はこんな風景を見て東山魁夷さんのこの言葉を思いだしてしまいました。


 
 これは、栃木県那須町の関街道にある江戸時代(1877年)に建てられた三森家住宅(国指定重要文化財)の表門からの眺めです。田んぼのむこうには、植林された山が見えています。

 


 この表門は、長屋門ともよばれているようです。この三森家住宅は裏に山があり南に向けて建てられていて、門を入るとこんなわらぶきの家がありました。



入ってすぐの庭は、松の木が配置され、ところどころにもう咲き終えたヤマユリが、実をつけていました。

 東山魁夷さんは、庭はその家に住む人の心をもっともよく表すものであるとも言われていますが、この庭も素朴で朴訥な感じのする庭でした。



 三森家住宅を後にして、前の関街道に出てみますと、田んぼのへりには、コスモスが群れて咲いていました。

 日本のなつかしいような感じのする秋の山里の普通の風景が広がっていたのですが、こんな風景が、わたしたちが大事にしたいものなのかもしれません。

 「風景は心の鏡」なのですね・・。

 







 

2019年10月11日金曜日

彼岸花のある風景・・・



 今年は彼岸花の開花がとても遅く、例年よりも2週間ぐらい遅れて咲きました。この花は、9月29日に、白河の南湖のほとりに咲いていた彼岸花です。




 彼岸花が咲いているのを見るといつもその造形のすばらしさに惹かれるのですが、こんな豪奢な花のルーツは、日本ではないような気がしてくるのは、わたしだけでしょうか・・。




「植物知識」という牧野富太郎さんの本によれば、万葉集に出てくる「イチシ」という植物は、彼岸花なのではと、新説として書かれています。

路(みち)の辺(べ)の壱師(いちし)の花の灼然(いちしろ)く、人皆知りぬ我が恋妻を

 中西進さんの「万葉集」によれば、この壱師の花は、未詳と出ていますので、まだ定説にはなっていないようですね。




 また、牧野さんは、ヒガンバナの中国名は石蒜(せきさん)で、この花は日本と中国が原産と、書かれているのですが、この本の後ろの「注」には、日本のヒガンバナは、有史以前に中国から来たという説もあるとのことでした。

 やはり、わたしが疑問を持ったように、あまりにも華麗すぎるこのヒガンバナは、やはり大陸から来た花なのかもしれませんね・・・。
 
     「いっぽんのまんじゅしゃげ見ししはわせに」 山口誓子