先日、友人からハーブのヘンルーダが、レターパックで送られてきました。須賀敦子さんの本で読んだハーブです。この植物のことは、「トリエステの坂道」という須賀敦子さんの本の中の「セネレッラの咲くころ」に出ています。
須賀さんは、ヘンルーダの香りのことを、「つよい臭気を放っていて、ちょっと手が触れただけで、吐き気をもよおすような臭み」と、表現なさっていたのですが、どのような匂いなのか嗅いでみてと、友人が庭に咲いているものを、送ってくださったのでした。
興味深々でビニール袋を開けてみると、ドクダミをもっと強烈に青臭くしたような強い香りがしてきました。わたしにはそれほど嫌というような香りではなかったのですが、須賀さんは苦手だったようです。
ヘンルーダは、グラッパに入れるとよいとのことで、須賀さんのお姑さんは、グラッパにこのヘンルーダを一枝いれておいたものを、冬になって須賀さんご夫婦が訪ねたときに、戸棚から出してくださったそうです。
グラッパが大好きだった夫のペッピーノさんは、ヘンルーダが入った瓶を透かして見て喜ぶのを、須賀さんはあの臭いヘンルーダなのだと、ご自分と彼の間にいやな匂いの草が割り込んできたような思いにとらわれたと書かれています。
そして、お姑さんに素直な気持ちになれなかったときなど、彼女からヘンルーダの匂いを嗅いだような気がすることがあったとか・・。香りではなく、匂いと書かれています。
イタリアという異国で暮らしていた須賀さんの、ヘンルーダの香りの思い出は、その時の感情の機微にまでふれていらっしゃるのでした。
わたしの持っている英語の本「The Illuminated LANGUAGE OF FLOWERS」によれば、ヘンルーダは「Rue」で、花言葉は「Disdain」と出ていますので、後悔や悲嘆・ひどく悔やむ・悔恨などの意味になるのかなと思います。
ヘンルーダは、独特の香りと共に忘れがたい名前になりました。いただいてからもう数日たつのですが、まだ香りは、健在です。