2020年2月24日月曜日

読書・「ハドリアヌス帝の回想」マルグリット・ユルスナール著・多田智満子訳と、「ユルスナールの靴」須賀敦子著 



 昨日の23日は、朝から久しぶりの雪でした。午後の散歩のときには、雪もだいぶとけていたのですが、こんなにすてきなドライフラワーに雪が氷になってまだ溶けずに、残っているのを見つけました!!!



 数日前から読んでいたマルグリット・ユルスナールの「ハドリアヌス帝の回想」を午後に読み終えました。この本の著者の名前は、30年ぐらい前にベルギーのアントワープに住んでいたときに、読書好きのベルギー人のRさんに教えていただき知っていたのですが、当時からユルスナールは人気作家のようで書店に行ってみると、彼女のフランス語の本が山積みにされていたのを覚えています。




 帰国後にユルスナールの本を翻訳で最初に読んだのは、「東方奇譚」ですが、その中の短編の「源氏の君の最後の恋」というタイトルに惹かれて読んでみた本でした。その後、図書館でユルスナールの分厚い本を2冊借りてきたのですが、途中まで読んだ後、これは買って読むべき本かもしれないと思い、「ハドリアヌス帝の回想」を買って、ずっと長い間本箱に置いてありました。



先日、須賀敦子さんの「ユルスナールの靴」を再読後、ユルスナールが書いた「ハドリアヌス帝の回想」が本箱にあるのを思い出し、ようやく何年かぶりで取り出して、今回は最後まで読むことができました。
 完読してみると、やはりすばらしい本だったと再認識しました。
 須賀敦子さんは、ユルスナールのことを、「ヨーロッパの粋であるような思考回路」そして、彼女の本を「語彙の選択、構文のたしかさ、文章の品位と思考の強靭さで読者を魅了」と、表現なさっていますが、わたしも全く同感です。



 そして、わたしは、ユルスナールは、アメリカという異国に住むようになり、彼女の本質であるヨーロッパ文化への限りない愛をこういう物語に託すことによって、自分のアイデンティティーを見つけ、紡いでいったのだと思いました。

 須賀さんも、フランスやイタリアへの留学、そしてイタリア人との結婚によるヨーロッパ文化への聡明な理解から本を書かれているのですが、何かおふたりには、共通の異邦人としての意識のようなものが、文学表現へと駆り立てていったように思えてなりません。




 ベルギー人のRさんが、ユルスナールを誇りに思うと言われていたように、わたしも須賀敦子さんのようにヨーロッパ文化を深く理解できるような聡明な女性が日本にいたということを、誇りに思えた読書でした。

 


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