瀬戸内寂聴さんが、先月の11月9日に99歳で亡くなられました。TVやユーチューブなどでお聞きしたことのある瀬戸内さんのあの独特の親しみやすくやさしいお声が、耳に残っています。
寂聴さんは以前に「生きた・書いた・愛した」というタイトルの対談の本を出していらっしゃいますが、彼女の99年の人生を考えると、この言葉がぴったりのように思えます。
また、反戦や原発反対などで行動するお姿や、宗教家というお立場からのわかりやすく親しみやすいお話も、忘れられません.
寂聴さんの著作の中では、源氏物語の訳が一番好きです。わかりやすく平易に読め、彼女のお人柄が訳にもあらわれているように感じるのは不思議です。寂聴源氏で源氏物語を完読した方は、きっと多いと思います。
★瀬戸内寂聴訳 源氏物語 講談社 (全十巻)
寂聴さんの書かれた「場所」という本に、「源氏物語」を現代語に訳された、谷崎潤一郎さん、円地文子さん、そして瀬戸内寂聴さんのお三人が、同じ目白台アパート(いまはヴィンテージマンションになっています)に住んでいらしたことがあると書かれていたのですが、偶然とはいえ、お三人の不思議なご縁を感じました。
★谷崎潤一郎訳 源氏物語 中央公論社
★円地文子訳 源氏物語 新潮文庫 (全五巻)
寂聴さんが最初に源氏物語を読まれたのは、徳島県立の女学校に入ったばかりの13歳のときで、学校の図書館で「源氏物語 与謝野晶子訳」を、夢中になって読まれたとか・・。寂聴さんは「読みやすい歯切れのよい文章」と、与謝野源氏について書かれているのですが、そういえば、わたしも最初に源氏物語を全巻読んだのは、与謝野晶子の訳でした。
寂聴さんは、また「わたしの源氏物語」という本で、源氏物語について、ご自分のお考えも入れてわかりやすく解説していらっしゃるのですが、読み応えがありわたしの好きな1冊になっています。この本の最後に、源氏物語の主人公は、光源氏ではなく、源氏のまわりの女性たちであったと思えてならないと、言われているのですが、彼女の視点にわたしも共感です。寂聴さんの訳の源氏物語は、こんな風に始まっています。
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いつの御代(みよ)のことでしたか、女御(にょうご)や更衣(こうい)が賑々(にぎにぎ)しくお仕えしておりました帝(みかど)の後宮(こうきゅう)に、それほど高貴な家柄のご出身ではないのに、帝に誰よりも愛されて、はなばなしく優遇されていらっしゃる更衣がありました。
・ー・ー・ー・ー・ 瀬戸内寂聴訳「源氏物語」一 講談社 8p引用
寂聴さんの訳の源氏物語を、もう一度読みたくなりました・・。
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