昨年末から新年にかけて、今シーズンは例年になく雪が多く、うちのまわりはいまでも真っ白の銀世界が続いています。散歩のときに見つけた枯れ葉は雪に埋もれて、こんな感じになっていました。
いま、高遠弘美さんの翻訳で、プルースト「失われた時を求めて」1を読んでいるのですが、この本の後ろの読書ガイドに、高遠さんがこんなことを書かれているのを先日見つけました。
高遠さんは、吉田秀和さんを文筆家として敬愛していらっしゃるとのことですが、吉田さんほど的確にプルーストを読むことの本質について書いている文学者は、ほとんどないだろうとも言われています。そしてこの本「ヨーロッパの響、ヨーロッパの姿」を紹介なさっていました。
わたしも吉田秀和さんのエッセイは大好きで、この本のプルーストに関する彼の考察には、敬服しておりましたので、再読してみました。
春のある日、友人宅を訪ねた吉田さんは、友人を待っている間、部屋の本棚に白い本があるのを見つけて読んでみると、むかし読んだことのあるプルーストの「失われた時を求めて」だったそうです。最初のページから引き込まれていくのを感じ、早速翌日に本屋さんに行き、あのプレイヤード版の第一巻を買われたとのこと。
速くは読めないので、少し読んではまた初めに戻ったり、なつかしくまた新しく読み直したそうですが、吉田さんはこのように書かれています。
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・・・・あのフランス語独特の旋律、フランス人仲間で話す時のせきこみ方や間の置き方。こんな室内楽をきくのは、プルーストでは、はじめての経験だった。
わたしは、この小説を読んでいて、何かを知るというのではなくて、何かを思い出し、何かに気がつくのだが、それはこの本を読まなければ気がつかず、思いださないことでもある。・・・・・
プルーストは私を私に還す。彼の世界では、新しいものも、すべて、初めからあったものである。・・・・・・・・・・
・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ 引用・196p・197p
吉田秀和さんは「失われた時を求めて」をフランス語の原文で読まれていて、しかもこのように感性豊かに、この小説を味わわれているということに、驚きます。
プルーストは、吉田秀和さんにとって、「ヨーロッパを創る上で重要な一役を果たした人でもあった」とのことでした・・・。
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