きょうは、寒い一日でした。寒いこんな日には、いつも決めている散歩コースを、ショートカットしての散歩でした。散歩の途中で見つけたガマズミの実です。冬の日差しの中で、もう葉もすっかり落ち、こんな感じになっていたのですが、まだ、最後の輝きを見せてくれていました・・。
老年と死をテーマとしたヘルマン・ヘッセのエッセイと詩を、ドイツのヘッセ研究者が集めて、本にしたものですが、彼の写真家の息子が写したモノクロの写真も、いっぱい載せられています。
ヘッセは1946年にノーベル文学賞を受賞していますが、彼の本は、「車輪の下」と「シッダールタ」などを読んだのみで、晩年にこのようなエッセイと詩を書いていたというのは、知りませんでした。
この本の中では、「秋の体験」という若いころの友人がたずねてくるエッセイが好きです。
彼の名前はオットーといい、ヘッセの少年時代からの友人で、弁護士や市長なども務めた温厚な人柄でもあり、久しぶりにヘッセを訪ねて二人でしあわせな時間を過ごされたとのこと・・。
友人は、帰宅後すぐに75歳で亡くなられていますので、お二人にとって人生での貴重な時間であったと、思います。
少年時代にお二人は、同じ神学校の生徒として過ごされ、そのころのことは、「車輪の下」に書かれているとのことでした。
「人は成熟するにつれて若くなる」には、いくつか詩も載せられているのですが、その中ではこの詩「老いてゆく中で」がいちばん好きです。最初の4行を引用してみます。
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老いてゆく中で
ヘルマン・ヘッセ
若さを保つことや善をなすことはやさしい
すべての卑劣なことから遠ざかっていることも
だが心臓の鼓動が衰えてもなお微笑むこと
それは学ばれなくてははならない
・-・-・-・-・ 引用56p
「微笑むこと」を、ヘッセは老いてもなお人生では学ばなくてはならない大事なことといっていますが、わたしも本当にそう思います。
わたしは、ふと宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を思い出したのですが、賢治は、「雨ニモマケズ」の中で、たしか、こんなことを言っていました。
「イツモシズカニワラッテイル」「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と・・・。
「微笑むこと」と「イツモシズカニワラッテイル」は、どちらも人生の穏やかな究極の境地を示しているように感じたのでした・・。