4月に入ってから、先日は雪も降り、今年の春は寒のもどりが多かったのですが、フキノトウもだいぶ茎が伸びてきました。
ユリシーズもついに、最後のⅣになりました。長い読書でしたが、読みにくさと面白さが同居する、不思議な読書体験をした本でした。
Ⅳの解説は、「巨大な砂時計のくびれの箇所」というタイトルで、丸谷才一さんが白眉のジョイス論を書かれているのですが、読み応えがあり、ジョイスの文学がより深く理解できるように思いました。
丸谷さんは、ジョイスの文学で重要なのは、「言語遊戯」であり、その例として、「洒落」や「合成語」「造語」「パロディ」や「パスティーシュ」「冗談」「詭弁」「変痴気論」「糞尿譚」「ポルノ」「歌詞の引用」「辞書と競争」「羅列」「目録」「雑学」「ペダントリ」「謎々」「パズル」などをあげられているのですが、これらの単語を羅列してみただけでもジョイスの特異な文学の世界が感じられます。
わたしは、ジョイスは、かなりの知性と遊びごころで、これらのことを、いままでにない新しい文学の試みとして、思いつく限りの方法で、文字を書き連ねてユリシーズを書いたのだと理解したのですが、丸谷さんはさらにこのように書かれています・・。
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「人類の小説史全体の比喩としての巨大な砂時計の、くびれの箇所に当たるものを、ジョイスは書いた。」
・-・-・-・-・ 引用556p
ということは、砂時計の上の部分は、いままでの小説、そしてくびれは、ジョイス、その下の部分にあたるのは、ポストジョイスの小説ということで、丸谷さんの比喩は、さすがと納得でした。
プルーストの「失われた時を求めて」を読んだときにも感じたのですが、今回のジョイスの「ユリシーズ」の読後感も、すごい小説を読んでしまった!!!という同じ感想でしたが、わたしにとって、どちらの小説が好きかといえば、やはりプルーストかもしれません。
ジョイスの本は、プロの読書人のもので、わたしのような本好きの一読者に、新しい読書の喜びの世界を広げてくれたのはプルーストでしたから・・・。
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