2025年7月20日日曜日

読書・「漱石の白百合、三島の松」塚谷裕一著 中公文庫


  今年も、ヤマユリの季節になりました。いつもの散歩道で、ヤマユリが今年の夏一番に咲いているのを見たのは、7月の8日でした。朝のまだ涼しい高原の冷気の中、咲いたばかりのヤマユリは、とても新鮮ですてきでした。

 下の写真のヤマユリは、先日の朝、開花したばかりの花です。



  先日、友人からのすすめで「漱石の白百合、三島の松」という本を読んだのですが、タイムリーにヤマユリの話が出ていました。著者の塚谷さんは文学がお好きな植物学者で、漱石の本に出てくる白百合とは何なのかと推理なさり、「ヤマユリ」であると同定なさっていました。

 また、ヤマユリは、厳密にいえば白百合ではなく「カラフル」であるとも言及なさっているのですが、そういわれてみればよく見るとカラフルな花なのでした。



  ヤマユリのディテールを改めてよく観察してみますと、花弁の地は白ですが、真ん中に黄色の帯が走っていて、赤い褐色の斑紋が一面にちりばめられています。雄しべは6本で、先端の葯は茶色、真ん中の雌しべは1本で、それらを支えている花糸は、うすみどり色と、やはり、「カラフル」なのでした。(花糸というすてきな言葉は、この本で知りました)

 塚谷さんによれば、ヤマユリの学名の種小名は「auratum」で、「黄金の」という意味があるとのこと。命名者 Lindreyにとっては、中央の帯の黄色が印象的だったのだろうということですが、このあたりの記述は、さすが植物学者と納得・・。

 そういえば、土壌の性質の加減でしょうか、下の写真のような花弁の帯がうすい紅色のヤマユリも、ところどころで、見かけます。



  塚谷さんは、日本の作家はなぜ、このようにカラフルなヤマユリから、白だけをとりだして、「白百合」と描写したのだろうかと、疑問を持たれているのですが、その答えは、「白百合」は、輸入概念であり、「ヤマユリ」に白百合としての脚光があてられたのではと結論なさっています。

 わたしもいままでは、何の疑問ももたず、ヤマユリは、白と決めていたのですが、よく観察してみると、花弁はとてもカラフルな花なのだと、再認識させられたのでした!

 また、ヤマユリは日本では、沖縄、北海道、四国、九州などには自生しないとのことで、このあたりの散歩道にたくさん自生しているのを見ることができるのも、とても幸運なことなのだと、改めて実感したのでした。

 濃厚な香りがただようヤマユリの咲く木陰の涼しい散歩道を歩くのは、この季節の楽しみです・・。




 


 

 


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