数日前に初しぐれが降りました。
もう、しぐれの季節になったのだと思うと
いつも胸がきゅんとしてくるのは、 しぐれが、
好きだからでしょうか・・。
新古今集の中で摂政太政大臣良経は
しぐれの歌をこんな風に詠っています。
「洩らすなよ雲ゐるみねの初しぐれ
木の葉は下に色かはるとも」
新古今集1087・恋歌二
この歌は、言葉書きに
「左大将に侍りける時、家に百首歌合し侍りけるに、
忍恋のこころを」
と、書いてありますので、忍ぶ恋のこころを詠っているようです。
忍ぶ恋がなぜ、しぐれなのと思ったのですが、わたしの秘かな
忍ぶ恋を初しぐれよ洩らさないでと、いっているようです。
わたしが良経の歌に注目するようになったのは、歌人の
塚本邦雄さんの書かれた「定家百首・雪月花(抄)」を読んでからです。
塚本さんは、雪月花(抄)で、良経の歌を50首紹介し、絶賛しています。
その彼が選んだ良経の50首の中のひとつです。
「おしなべて思ひしことのかずかずになほ色まさる秋の夕暮れ」
新古今集・秋上
塚本さんは、この歌のことをこのように書いていらっしゃいます。
「優雅極まる侘しさ、清冽な憂鬱さ」
「沈痛でしかも潤ひのあるこの調べこそ、まさに
秋の夕暮、人の心の黄昏、煉獄の時間の象徴であった。」
雪月花(抄)の245pから引用
良経の「初しぐれ」の歌もいいですが、この「秋の夕暮れ」の歌も
忘れられない歌になりそうです。
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