2019年7月18日木曜日

読書・もう、1冊の「消え去ったアルベルチーヌ」高遠弘美訳 光文社古典新訳文庫




  連日の雨で気温が低く、太陽を見ない日が続いているのですが、散歩の時に、太陽のように輝いている花を、見つけました。キンシバイの園芸品種で、ピペリカムヒドコードという難しい名前の花です。梅雨のこの季節に、元気をもらえるような花でした。




 岩波文庫の吉川一義訳の「失われた時を求めて12 消え去ったアルベルチーヌ」を読み終えたばかりでしたので、比べてみようと思い、大分以前に読んで本箱にあったこの本を、再読してみました。

「消え去ったアルベルチーヌ」プルースト 高遠弘美訳 光文社古典新訳文庫です。

 


 この縮小版は、プルーストが死の直前に手を入れたタイプ原稿で、1987年に発見され、グラッセから出版されているので、グラッセ版と言われているようです。

 このグラッセ版は、「消え去ったアルベルチーヌ」の四分の一ぐらいに大幅な削除がなされています。そのせいか、わたしにとってはとても読みやすく、一気に読んでしまいました。従来の「消え去ったアルベルチーヌ」よりも、こちらの方がよりプルーストの意図が明白になっていて、おもしろく読むことができたように思います。




 ただこのグラッセ版の発見のおかげで、翻訳する方は、この第六篇の「消え去ったアルベルチーヌ」の部分を、全体の中でどう位置づけるのか、いままでの自筆の原稿やタイプ版などとも比較して校訂の難しい選択をせまられることになってしまったようです。

 それにしても、いままでは、フランス語圏のみで読まれていたこのグラッセ版を、日本語の翻訳で読めるようになったというのは、わたしのようなプルーストファンとしては、しあわせなことだと思いました。




 ※このグラッセ版の「消え去ったアルベルチーヌ」を訳された高遠弘美さんは、いま、光文社古典新訳文庫で「失われた時を求めて」の全巻の翻訳にとりくんでいらっしゃる途中です。わたしは、最初の2冊まで、読んだのですが、全巻翻訳の完了を期待しております!


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