2022年2月13日日曜日

読書・「モオツァルト・無常という事」小林秀雄著・新潮文庫

 


  わたしは2月生まれだからでしょうか、冬晴れのすみきった青空が大好きです。こんな青空にゆっくりと白い雲が流れていくのを見ていると、晴れ晴れとした穏やかな気持ちになってきます。

 そして天空からモオツァルトの曲が聴こえてくるように感じるのは、最近、毎日のようにモオツァルトの曲ばかり聴いているからかもしれませんが・・。




 先日、吉田秀和さんの「ソロモンの歌 一本の木」(講談社文芸文庫)を読んでいましたら、彼は、小林秀雄さんの「モオツァルト」を「創元」という雑誌で読んだときのショック
は、一生忘れられな
いだろうと書かれていたのをみつけ、驚きました。

 わたしもむかし、小林秀雄さんの「モオツァルト・無常という事」を読んで、同じようにショックを受けたことがあったからです。

 小林秀雄さんの「モオツアルト・無常という事」という本は、たしか古本屋さんで買ったものを持っていたはずと思い本箱で探してみましたら、ありました!すっかり古くなってしまい黄ばんでいて、文字も小さく読みにくいので、早速新しい本を注文して読み直してみました。




 わたしが忘れられなかったのは、モオツァルトについての小林秀雄さんのこのような文でした。引用してみます。

 「僕の乱脈な放浪時代の或る冬の夜、大阪の道頓堀をうろついていた時、突然、このト短調シンフォニイの有名なテエマが頭の中で鳴ったのである。」13pから引用      

 そして、もうひとつ




「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡(うち)に玩弄(がんろう)するには美しすぎる。空の青さや海の匂いの様に、「万葉」の歌人が、その使用法をよく知っていた「かなし」という言葉のようにかなしい。」45pと46pからの引用                                    (ト短調クインテットK516)

 モオツァルトの音楽をこのように表現することができた小林秀雄さんを、江藤淳さんは「批評美学」と言われているのですが、その批評美学の方法に吉田秀和さんもショックを受けられたのだと思います。

 さらにあとがきの解説で江藤淳さんは、この「モオツァルト」を読んだ読者は、モオツァルトのかなしい青のことを忘れないであろうとも言われていますが、わたしもその一人の読者になったのでした・・。                                  

 




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