毎日、お天気の良い日には、ウグイスの鳴き声が聞こえるようになりました。いつもウグイスが鳴き始めるころになると、散歩道に咲く花があります。小さなピンクのミヤマウグイスカグラです。
夏に真っ赤な実をつけるのも愛らしく、かわいい花です。
ゲーテのイタリア紀行を、読みました。
ゲーテ、そしてイタリアといえば、わたしはすぐにゲーテのこの詩「ミニオン(君や知る)」を思い出してしまいます。手持ちの高橋健二さんの訳の「ゲーテ詩集」からの引用です。
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「ミニオン(君や知る)」 ゲーテ
君や知る、レモン花咲く国、
暗き葉かげに黄金(こがね)のオレンジの輝き、
・-・-・-・-・-・ 引用・ゲーテ詩集・高橋健二訳・新潮文庫
最初の2行ですが、「レモン花咲く国、黄金のオレンジの輝き」というフレーズには、いつもゲーテの南国への強いあこがれを感じてしまいます。
ゲーテは1786年9月、 37歳のころ、この詩のように長年のあこがれだったレモンが花咲き、オレンジが実るイタリアへと旅立ったようです。
ブレンナー峠を越え、ヴェローナ、ヴェネチィア、ローマ、ナポリ、そしてシチリアへ船で渡り、ナポリに戻るのですが、ここまでが、上巻です。
ゲーテはナポリのところで、土地の人たちがいっている言葉として、「ナポリを見て死ね!」という言葉を紹介していますが、ゲーテもナポリの海辺や湾、ヴェスヴィオ山、街並みなどすべての光景に感動したようです。
そして、ポジリポの洞窟に行ったときには、沈んでいく太陽がべつの側から差し込んでくるのを見て、父がかって旅したナポリのことを想っていたために、人生で不幸のどん底におちいることがなかったのだというのを思い出すのですが、ゲーテの父への愛も感じられ、好きなところです。
ゲーテは博識でしたが、植物にも興味があったということには、親近感を覚えます。旅にリンネの植物の本を持って行ったというのも納得です。
美しく晴れた4月の午後、ナポリからの辛い船旅を終えパレルモに着いたときゲーテを迎えてくれたのは、山と海と空をとけあわせるようなすばらしいもやの風景と、植物たちだったというところも印象的でした。
その植物とは、新緑の桑の木、セイヨウキョウチクトウ、レモンの生垣などの木々と、公園の広い花壇には、ラナンキュラスやアネモネなどの花たちだったとのこと・・。
タオルミーナでは澄み切った空の下、バルコニーからバラが咲いているのを眺めながらナイチンゲールを聞いたことは忘れられない思い出になったとも書いていますが、シーンが想像できました。
彼はシチリアでの旅の間、このような南国での風物に癒されながら、新しい作品の構想を練ることができたようです。
また、ゲーテはナポリの海岸や、パレルモの公園を散歩しているときに見た植物たちから、植物学上の原植物という考えにも思いをはせているのにも興味を持ちました。
レモンの花が咲き、オレンジが実るこのイタリアへの旅は、ゲーテにとって、あたらしい創作への意欲を搔き立ててくれた女神になったようですが、それにしてもゲーテの文学的思考と学問的思考の幅広い教養のようなものには脱帽してしまう読書でした・・。
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