散歩していると、コナラやクヌギのドングリが、いっぱい落ちているのを見かけます。ドングリを見るとつい拾ってしまうのは、子供の頃を思い出すからかもしれませんね。
帽子を冠ったかわいい実ですから・・。
「収容所のプルースト」は、光文社古典新訳文庫のプルーストの「失われた時を求めて」の翻訳者である高遠弘美さんが、「失われた時を求めて」の3と6の読書ガイドでふれていらっしゃいましたので、読んでみました。
この本「収容所のプルースト」を書いたのは、ポーランドの画家で文筆家のユゼフ・チャプスキです。
チャプスキは、1939年9月に将校としてソビエト軍の捕虜となり、零下45度にもなるという厳しい寒さの強制収容所で、同房の囚人たちに「失われた時を求めて」の講義をしたのですが、その時の講義録がこの本です。
彼の講義はテキストもない中、監視の目をくぐり抜け、あの膨大な物語を思い出だけで語っています。少し記憶違いはあるものの、プルーストの文学の本質にせまっているのはすばらしく、たしかな審美眼を感じました。
高遠弘美さんはチャプスキについて、「フローベルやボードレールについて本が手元になかっために記憶だけで書いたプルーストを想起させ、感動する」と、言われていますが、わたしも同感でした。
ポーランドの将校虐殺というカティンの森の痛ましい事件は、最近知られたことですが、彼らと同じに捕虜の将校だったチャプスキが、幸運にも収容所を生き延びて、このような講義録を本にすることができたというのも奇跡に近いことかもしれないと思いました。
「失われた時を求めて」の豊饒なフランス文学の世界の再認識、そして、収容所での精神的な支えにもなったプルーストの文学の力のようなものを感じさせてくれた本でした・・・。
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