今年の夏は猛暑だったのですが、9月に入り朝夕は涼しく感じられるようになりました。夏の暑さに弱いわたしですので少しほっとしています。 散歩道では、ノハラアザミが咲くようになりました。ヒョウモンチョウやカメムシ、マルハナバチなどの人気の花です。
高遠弘美さん翻訳の「失われた時を求めて」6第三篇「ゲルマントのほうⅡ」を読みました。「失われた時を求めて」の6を読むのは異なる翻訳で4度目です。
6はヴィルパルジ夫人のサロンでの人々の会話がずっと続くのですが、プルーストの人間観察の鋭さは、まるで心理学者のようで、ときどき笑ってしまうほどシニカルに喜劇的な面を描いています。
そして、最後は、ヴィルパリジ夫人と女学校でいっしょだった主人公の愛する祖母の死の場面で終わっています。祖母の死にいたるまでの描写がまた、プルーストの白眉と思われるような文で読み応えがありました。
主人公の祖母は尿毒症で亡くなるのですが、そのシーンを心に残るすてきな文で描いていますので、高遠弘美さんの訳で引用させていただきます。
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祖母の両親が娘のために婿を選んだ遠い昔の日々のように、祖母は純潔さと従順さが繊細に象られた顔立ちに戻り、頬は、歳月が少しずつ破壊してきた清らかな希望や幸福への夢、無邪気な陽気さとともに輝いていた。祖母から立ち去った生命は、同時に生への幻滅も持ち去っていった。祖母の唇のうえにはほほ笑みがひとつ浮かんでいるかに見えた。死は中世の彫刻家さながら、この死の床に祖母を、うら若き乙女の姿で横たえたのである。
・-・-・-・-・-・ 引用 406p
わたしはこの最後の部分を読むといつも、プルーストの実際の祖母や母に対する深い愛情が感じられて胸がきゅんとしてしまいます。何度でも読み返してしまう好きな文です・・・。
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