わたしがまだ学生だった頃、大好きな詩人は立原道造でした。
彼の詩「のちのおもひに」に出てくる「水引草」が、いま、うちの庭に咲きはじめました。
こんな花です。
正しくは「ミズヒキ」といいます。 赤い小さな花びらのように見えるのは、実は4個の萼片です。
赤い萼片を裏に返して見ますと、白く見えるので紅白の水引にたとえてミズヒキという名前になったということですが、試してみますと、やはり、白かったです。
今朝は、雨が降りましたので、雨の雫も付いていてすてきでした。
「のちのおもひに」には、この花穂が風に揺れる様を「水引草に風が立つ」と表現していますが、こんな詩です。
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「のちのおもひに」
立原道造
夢はいつもかへつて行った 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午(ひる)さがりの林道を
うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
ーそして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた・・・・・
夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには
夢は 眞冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう
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引用 立原道造詩集 彌生書房 39p、40p
「水引草に風が立つ・・・」すてきな表現ですね。
うちの庭の水引草にも、風が立ったようです。雨のしずくが一つ落ちました。
立原道造詩集・小山正孝編・彌生書房
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