カズオ・イシグロさんが、ノーベル文学賞を受賞なさいました。
わたしが英国に住んでいたときにブッカー賞をとられた
「The Remains of the Day」(日の名残り)を、
ロンドンの本屋さんで買ったのを、懐かしく思い出しました。
英国を代表するような職業であるバトラー(執事)が主人公で、
以前に彼といっしょにお屋敷で働いていた女中頭のミス・ケントン
との、淡い恋愛のお話しです。
辞書をひきながら読んでいたのですが、5歳のときから
英国に住むようになったカズオ・イシグロさんが、このような
英国の真髄とも呼べるような人々の想いを、書いていらっしゃるのには、
とても感服したのを覚えています。
その後、翻訳でも読み、映画化されたものを観たりと、ますますこの本は
思い出の1冊になりました。
上流階級で話すアクセントの執事に扮したアンソニー・ホプキンズや
女中頭に扮したエマ・トンプソンの声がまだ耳に残っています。
物語の最後のところのシーンは特に印象的でした。
海辺の避暑地の桟橋のところで、夕刻に色付き電球が点灯されるのですが、
その瞬間に、そこにいた人々が歓声をあげるのです。
懐かしいミス・ケントン(いまは結婚してミセス・ベン)と、つかの間の
再会の後、雨のバス停で別れたばかりの執事のミスター・スティーブンスは、
新しいお屋敷の雇い主であるアメリカ人のところで、どのように新しく仕事に
取り組んでいけばいいのか、新たな執事としての決意をするのでした。
日本人としての心も持っていらっしゃるカズオ・イシグロさんの
ノーベル文学賞受賞は、うれしい出来事でした。
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