2020年5月21日木曜日

読書・「言葉」J-P・サルトル 澤田直訳・解説 




 サルトルの「言葉」を最初に読んだのは、学生の頃でした。友人に勧められて読んだのですが、内容はもうすっかり忘れていました。




 サルトルがプルーストを熟読していたというのは、何かで読んで知っていたのですが、本を読み直してみると、プルーストに関する箇所を見つけました。

 それは「失われた時を求めて」の「スワンの恋」に出てくるスワンの言葉です。スワンが恋から覚めたとき、「好みでもない女のために一生を棒にふってしまった」というあのフレーズです。やはり、サルトルもこの言葉には、何か惹かれるものがあり使用したのでしょうが、サルトルのユーモアのようなものも少し感じました。




 サルトルは、プールーと呼ばれていた子供のころから、作家になるのが天職と思っていたようです。
 人生が始まった時、わたしのまわりには本があった、死ぬときも多分そうだろうと言っていますが、幼少の頃の本に囲まれた恵まれた環境は、彼の知性に限りなくプラスの影響を与えたのだろうと想像できました。本に囲まれて育ったサルトルが本を書くことになるのは、必然でもあったのかもしれません。
 



 この本は、サルトルが60歳近くになったときに幼年時代を書いた自伝ですが、彼が本を書く必然は自己救済でもあったようです。書くということを、多方面から考察しているのもおもしろく、一筋縄ではいかないやはり哲学者のサルトルらしさを感じながらの読書でした。




 フランソワーズ・サガンが、サルトルの「言葉」のことを「フランス文学全体の中でも最も才能に輝く書物」と言っていたのを思い出します。

 すべての言葉が結果をもたらす、沈黙も同様だという彼の言葉が、印象に残りました。




                        ※写真の花は、オオデマリです。




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