12月2日の朝、初氷が張り、初雪が降りました。初雪は、ふわふわと頼りなく空中を飛ぶ雪で、地上におりるとすぐに消えたのですが、初氷は、バードバスのもみじの葉を氷で閉じ込め、こんな感じになっていました。
詩人の高村光太郎は、冬が好きでしたが、今年ももう12月に入り、彼の好きな冬が来たようです。本箱にある吉本隆明さんが書かれた「高村光太郎」を久しぶりに再読しました。
わたしが初めて高村光太郎の詩を詩集として読んだのは、学生時代に友人からプレゼントとしていただいた「智恵子抄」でした。箱入りの当時としては豪華な装丁の本で、「レモン哀歌」などは、いまでも暗記することができるほどで、彼が戦後に住んでいた岩手の山口村の小屋を訪ねたこともあり、彼の彫刻も、「高村光太郎展」で見た「蝉」などもなつかしく思い出します。
吉本隆明さんの著書「高村光太郎」は、わたしが漠然といままでに持っていた高村光太郎に対する考察を深めさせ再考察させてくれた本でした。光太郎の留学の意味や結果、父との関係、戦後の戦争責任者としての生き方、妻の智恵子との関係など、さまざまなことの再考察でした。
それにしても、吉本さんは、光太郎の評伝を書かれている北川太一さんとは、学生時代からの友人であり、彼自身も光太郎研究者として、こんなにも多くの評論を書かれていたとは、この本から知ったことでした。
吉本さんは最後に「著者から読者へはじめの高村光太郎」という題で、ご自分と光太郎研究についてのかかわりを、こんな風に書かれています。
吉本さんは月島の下町生まれで父は舟の大工、(高村光太郎も下町生まれで父は彫刻家(師)。)吉本さんは、 父の手技は受け継がず、メタフィジークだけは受け継いだとのこと。そんなことから、光太郎の生涯と仕事と人間を研究していくことが、吉本さんの仕事になったとのことでした・・。
吉本さんの人生にとっては、重みのある「高村光太郎」論なのだと理解しました。
智恵子抄の見開きページ・智恵子の切り絵
吉本さんは、この本の「智恵子抄」論の中で、この詩をまれにみる夫婦の生活であり、羨望はあっても、葛藤を推測することすら許さないと書かれて紹介なさっていますので、最後に引用させていただきます。
・-・-・-・-・-・
あなたはだんだんきれいになる
高村光太郎
をんなが附属品をだんだん棄てると
どうしてこんなにきれいになるのか。
年で洗はれたあなたのからだは
無辺際を飛ぶ天の金属。
見えも外聞もてんで歯のたたない
中身ばかりの清冽な生きものが
生きて動いてさつさつと意欲する。
をんながをんなを取りもどすのは
かうした世紀の修行によるのか。
あなたが黙って立ってゐると
まことに神の造りしものだ。
時時内心おどろくほど
あなたはだんだんきれいになる。
・-・-・-・-・-・
引用 「高村光太郎」吉本隆明著・講談社文芸文庫 99p~100p
0 件のコメント:
コメントを投稿