2017年12月25日月曜日

読書・「パリの料亭(レストラン)」辻静雄著 新潮文庫 (パリのレストラン・ラセールの思い出・・)



  パリからの友人のFBを見ていましたら、なぜかずっと以前に彼らといっしょにパリのレストランに行ったときのことを、思い出してしまいました。

 わたしとパートナー、そして、そのフランス人の友人と彼のガールフレンドと、4人で行ったレストラン「ラセール」です。



  フランス料理研究家の辻静雄さんは、「パリの料亭(れすとらん)」という本の中で、このレストラン「ラセール」を、パリのレストランの中で一番好きだと紹介なさっています。

 わたしは、この本のはしがきに書かれている「ラセール」のことは、いつ読んでも好きなところです。

 辻さんは、うららかな初夏の夕刻の星空を眺めながら、このレストランで「鴨のオレンジ煮」を召し上がったとのこと。(ラセールは、天井が開くようになっているのです。)

 そのときのボーイさんが、すばらしいすきのない手さばきで、「鴨のオレンジ煮」を「リモージュの皿」に切り分けて最後のお化粧をしたものを、辻さんは、「クリストフルのナイフとフォーク」で、陶然と心ゆくまで、「サン・ルイのグラス」に注がれたボージョレと共に、ゆっくりと味わわれたとか・・。

 至福の時だったことと思います。



   わたしの「ラセール」での第一印象は、インテリアが豪華で、まるで異次元の世界に迷いこんだのかしらと思ったこと。そして、食事の質はもちろんですが、サービスも完璧だったのでした。

 わたしたち4人は、それぞれ違う料理を注文し、少しづつ皆で味見をして楽しんだのでしたが、「鴨のオレンジ煮は、うちのママンも作るけれど、どのように違うのかしら、楽しみ・・」と友人のガールフレンドがおっしゃり、ワインを飲んだときには「ベルベットのような舌ざわり・・」と友人が英語で、言ったのまで覚えています。たしか、ワインは、ボルドーの最高の赤?だったと記憶しているのですが・・。

 



 フランス料理は、気のおけない友人と楽しいおしゃべりをしながら、食べるのが最高と辻静雄さんもおっしゃっていますが、そのことをしみじみと実感した「ラセール」でのディナーでした。

 コーヒーのころ、おしゃべりを楽しんでいると、支配人の方が、銀のトレイに載せたリモージュのミニチュアのフライパンを、うやうやしく「マダ~ム、」と言ってきょうの記念にとおみやげに下さったのも、良い思い出です。




 レストランを出るときに、多分生涯の中で一番のすてきな思い出に残るフランス料理の
会食になるのだろうなあと思ったのもしっかりと覚えていて、そして、まさにそうなったのでした。

 あの日の、ラセールの食卓から見上げたパリの星空も、すてきでした・・。


 辻さんは、日本やフランスに本格的な調理師専門学校を作り、フランス料理などの食の文化を広めた稀有な文化人だと思いますが、ご子息の辻芳樹さんが書かれた本によれば、辻静雄さんは、2万冊以上の専門書を集め、750冊以上の著書を、出版なさっているとのこと。そして、英語、フランス語をはじめ、ドイツ語やイタリア語まで、独学でマスターなさったとか。

 残念なことに、辻さんは長年の美食の追求で高カロリー食を召し上がったため、1993年に60歳で肝不全で亡くなられているのですが、彼は、食の文化の探求のためにご自分の人生を、捧げられたように思えてなりません・・。

 この「パリのレストラン」を、読むたびに、わたしの楽しかった「ラセール」での食事の思い出と共に、食の文化人としての辻静雄さんのことが思われるのでした・・。


 

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