「失われた時を求めて」6ゲルマントのほうⅡ
プルースト作 吉川一義訳 岩波文庫
この本の前半に、話者が憧れていたゲルマント侯爵夫人に、初めて身近に会う場面が出てきます。
それは、ヴィルパリジ侯爵夫人のサロンでした。話者のあこがれのゲルマント侯爵夫人の目はブルーだったのですが、こんな風に書かれています。
・-・-・-・-・その目はフランスの午後の青い空をまるで画に描いたように映し出して広々と晴れわたり、たとえきらきら輝いていないときでも明るい光をたたえていた。
・-・-・-・-・ 引用71p
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よくその花を摘んだコンブレーの畑やタンソンヴィルの生垣ぞいに射していた遠い昔の日の光ではなく、さきほどゲルマント夫人がラ・ペ通りを突っ切ってきたとき、その通りに
ただよっていた黄昏(たそがれ)どきの匂いと埃(ほこり)である。
・-・-・-・-・ 引用73p
ブルーといえば、フランス国旗の色でもあります。
また、中世の頃は、聖母マリアの色、フランス王家の紋章の地の色(ロイヤルブルー)でもあり、そしてフランスの野に咲くヤグルマギクの色でもあるのですよね。
それにヤグルマギクは話者にとっては、コンブレーで咲いていたのを摘んだこともある思い出の花なのです。
話者があこがれていたゲルマント侯爵夫人との出会いの場面で、彼女をこの様なブルーの装いにさせたのは、プルーストの単なるおしゃれごころなのか、それとも何か特別な意味があるのか、ヤグルマギクを見る度に楽しい考えを、めぐらせてしまいます・・。
プルーストにとって、ゲルマントという貴族の名称のイメージカラーは、もしかしてブルーだったのかもしれませんね。
※上のヤグルマギクの画は、プルーストの花園という下記の本の39pからの引用です。
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