2021年9月10日金曜日

読書・「ジーノの家 イタリア10景」内田洋子著・文春文庫

 

  この本は友人にプレゼントしていただいたもので、内田洋子さんのエッセイを読むのは、初めてでした。内田洋子さんは、1959年生まれでイタリア在住30余年のジャーナリストとのことですが、彼女はどのようにイタリアのエッセイを書かれているのか、興味を持って読みました。



 最初のエッセイは、「黒いミラノ」。

 ミラノの知られざる暗黒街の部分を、ジャーナリストの嗅覚で、読者を物語の中に引き込みながら読ませてしまうのです。わたしはこの部分を読んだ時、アントワープに住んでいたころ、暗黒街とまではいかなかったのですが、閑散とした飾り窓が並ぶ通りを、ドキドキしながら歩いたことを思い出してしまいました。

 ヨーロッパの古い街には、こういう部分もあり、そこにはいろいろな人たちが住む生活があるのですよね・・。内田さんはこの黒いミラノをはじめ、さまざまなイタリアの10景を、そこに住むひとたちのレポートとして、愛情込めて書かれています。



 わたしはずっと須賀敦子さんのファンで、いつも彼女の知的で文学の香りのする本を愛読してきたのですが、内田洋子さんの本は、ジャーナリストの視点からの文で、ストーリーが抜群に面白く、しかも人間味にあふれた彼女の人柄をも感じさせられるようなエッセイでした。

 


 内田さんは、あとがきにこんな風に書いていらっしゃいます。

「名も無い人たちの日常は、どこに紹介されることもない。無数のふつうの生活に、イタリアの魅力がある。」

 わたしも同感でした・・・。 



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