2018年8月30日木曜日

藤田嗣治展・東京都美術館にて



 8月26日、藤田嗣治展を見に上野公園にある東京都美術館に行ってきました。36度の猛暑日のせいか、日曜日にもかかわらず並ぶこともなく、スムーズに見ることができラッキーでした。




 藤田嗣治は、わたしの大好きな画家ですが、今回特に惹かれたのは、1949年に
ニューヨークで描いたという「カフェ」という絵です。現在は、パリのポンピドゥーセンター所蔵とのこと。





 この画の前にたったとき、なぜか圧倒的に惹かれるものを感じしばらくの間、動けなくなってしまいました。
 もとより好きな彼の画ですが、こんなにも惹かれたのは初めての経験でした。

 物憂げな女性のまなざし、
 その彼女の内面を引き立てるような、乳白色といわれる肌の質感、
 黒のドレスとバック、
 書きかけのインク染みのある意味深な手紙・・・、
 ワイングラス、
 インク瓶とペン・・
 ワインを運んでいる髭ピンのギャルソンは、後ろ向き、
 シルクハットを被ったムッシュー
 あまりにもパリそのままのような、カフェの風景です・・・。

 それよりも何よりも、この女性の内面まで匂い立つように描かれていることがすてき!

 この画を、藤田は戦後の1949年に日本を離れ、パリへのヴィザをとるために滞在したニューヨークで描いたのでした。

  藤田のパリへの憧憬の痛いほどの想いが込められているので、こんなにもわたしのこころを打ったのかもしれません・・・。




 この画は、君代夫人も「気品があっていいわね」とおっしゃり 美術館への寄贈がきまり寂しがった夫人のために、藤田は、ほぼ同じ画を描かれたということですが、やはりこの画は、別格だったのではと思いました。

 この画の藤田手製の額もとてもすてきで、右側に彫られたワイングラスにスプーンが
さしてある素朴な彫刻もチャーミングでした。





 パリで初めて藤田の画(寝室の裸婦キキ)を見て彼のファンになってから、もう大分たつのですが、わたしの藤田の画を見る旅は、フランスのランスにある「ノートル=ダム・ド・ラ・ペ礼拝堂の中のフレスコ画」、大原美術館の「舞踏会の前」、笠間日動美術館の「室内(妻と私)」、京都国立近代美術館の「タピスリーの裸婦」、国立西洋美術館の「坐る女」、秋田県立美術館・平野政吉コレクションの「秋田の行事」、ポーラ美術館の子供たちを描いた「校庭」や「誕生日」、などと続いていますが、それぞれに特別な思い入れがあります。





 今回の藤田嗣治展には、上記の画の中からは、京都国立近代美術館の「タピスリーの裸婦」が来ていました。その画の中の後の壁をおおう布の模様に、麦の穂や赤いコクリコといっしょに、ブルーのヤグルマギクがブーケになって描かれているのに気がついたのが、うれしい発見でした。(プルーストの本にヤグルマギクが出てくるからです。)

 



 今回の藤田嗣治展の展覧会グッズで販売されていた「藤田画伯とねこ人形」です。
彼はエッセイの中で、ある夜部屋で何かしていると、急に猫が肩に飛び上がったので
これを描いたらおもしろいと思い、夜中かかって描いたら、評判になったと、書いて
いらっしゃいましたが、藤田の描く猫も、魅力的です。




 酷暑の昼下がりの上野公園にある東京都美術館からの帰りみち、イベント広場の方からお兄さまの声が、元気に響いているのを聞きながら、なぜかしあわせな気持ちで帰宅しました。


 



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