幸田文・著「木」新潮文庫を、読みました。
わたしにとっては、中勘助さんの書かれた「銀の匙」以来の感動で、名著だと思いました。
幸田文さんは、1990年に86歳で亡くなられていますが、その後に木にまつわるエッセイを15まとめて出されたのがこの本です。
最初の「えぞ松の更新」も好きですが、何といっても白眉は、「藤」でした。
幸田さんが、草木に親しむようになったきっかけは、3つあったとおっしゃるところからこのエッセイは始まります。
草木に親しむということを、父・露伴は大事な教養のひとつと考えていて、子供たちに教えていたようにもわたしには思われました。
木の葉から、木の名前を当てることがよくできた幸田さんの夭折なさった賢いお姉さまのことは、植物学者にしたかったと、後年、露伴はおっしゃっていたそうです。
後半で「藤」にまつわる話しが出てきますが、それは父露伴と幸田文さんの辛くて苦い思い出であり、さらにそれは、ご自分の娘さんの人生のことまで話しが広がっていくことでもあり、3人の個性と人生模様を見事に表現なさっています。
幸田さんの文は、幸田さんのお人柄がしのばれ、きりっとしていて、見事です。
「文は人なり」という言葉は、こういう文をいうのだと思います。「木」は、久しぶりに出あったすてきな本でした。
(・藤の写真は、須賀川牡丹園で今年写したものです)
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