2017年9月21日木曜日

クレーの絵本 谷川俊太郎



 知人から手紙が届きました。
 それは、彼女の先日亡くなられたパートナーの方の納骨を無事に
終えられたというお知らせと、詩の紹介でした。
 彼女がパートナーの方の遺品を整理なさっていたら、彼の机の
引き出しの中に、本を見つけられたそうです。



 その本は、クレーの絵が大好きだったパートナーの方の誕生日に
彼女が贈った「クレーの絵本 谷川俊太郎」で、ページをめくっていくと、
この詩に出あったということでした。




 それは、「死と炎」という題のこんな詩で、左のクレーの絵に
添えて書かれています。

・-・-・-・-・-・-・-・ 
 死と炎
           谷川俊太郎

かわりにしんでくれるひとがいないので
わたしはじぶんでしなねばならない
だれのほねでもない
わたしはわたしのほねになる
かなしみ
かわのながれ
ひとびとのおしゃべり
あさつゆにぬれたくものす
そのどれひとつとして
わたしはたずさえてゆくことができない
せめてすきなうただけは
きこえていてはくれぬだろうか
わたしのほねのみみに
・-・-・-・-・-・-・-・
        引用「クレーの絵本 谷川俊太郎」より




 彼女は、まるで夫の心を代弁しているようなこの詩に、読むたびに
涙がこみあげてくると、おっしゃっていました。
 
  彼女の胸中を思うと、高村光太郎の「悲しみは光と化す」という言葉を
思い出してしまいました。光太郎はこの言葉を、ベストパートナーを
亡くされた方に贈っています。

 光太郎も最愛のパートナーの智恵子さんに先立たれていますが、その
悲しみの究極を経験した後、やがて悲しみは光のようになって自分の
まわりに満ちてきて、生きているようにさえ感じられるようになるという
ことでした。

 彼女のいまの悲しみも、光のように思える日が来ますようにと願いながら
この本を読み終えました。





 



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