歌人の塚本邦雄さんは、「百花遊歴」という本の中で椿についてこんな風に、書かれていました。
「椿は藪椿 Camellia japonica L.var.japonicaに始まり藪椿に終る。その美も藪椿にとどめを刺すと言ってよからう。」
引用「百花遊歴」講談社文芸文庫38p
塚本さんがおっしゃるように、わたしも最近は、シンプルな藪椿のよさがわかるようになりました。上の写真は、先日の2月3日に東京の江戸川公園で写したものですが、このぐらいの蕾の開き具合が、好きです。
新潟生まれの知人が、よく雪椿の話しをしていらしたのを覚えているのですが、雪の多い新潟でひっそりと咲く赤い雪椿には、いつも何か愛しさと共に、憧憬を感じてしまいます。図鑑によれば、雪椿は日本海側の多雪地帯に適応した型で、標高300~1000mの山地に生え、4~5月に赤い花を咲かせるそうです。一度見てみたいなあと思う椿です。
これは、同じ日に椿山荘で見た白と桃色の染め分けの侘助です。ワビスケ系は、ツバキとチャノキの雑種とのことですが、まるで幼子が晴れ着を着たように見え、小さなかわいい花でした。
でも、侘助でしたらやっぱり純白の清楚な侘助の方に心惹かれます。
塚本さんは、椿と山茶花の違いについて、椿は香りがないけれど、山茶花には微妙な芳香があると書かれていました。
わたしはいままで椿と山茶花の違いは、花がその姿のまま首からポトリと落ちるのが椿で、花びらが一枚づつ散るのが山茶花と、花の散り方で見分けていたのですが、これからは、山茶花の芳香を嗅ぐのも楽しみになりました。
椿は、香りがないので、お茶の席にも活けられるということなのでしょうね。
塚本邦雄さんは、本の中で「椿」の短歌や俳句もたくさんご紹介なさっているのですが、塚本さんご自身の短歌がこれです。
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一人(いちにん)の刺客(しかく)を措(お)きてえらぶべき愛なくば
水の底の椿
塚本邦雄
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塚本さんらしい難解な短歌ですが、この短歌に出てくる椿は、もちろん塚本さんがお好きな赤い藪椿なのでしょうね。
水の底に沈んでいる赤い藪椿のイメージは、やはり塚本さんらしく強烈だなあと、思いました。
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