2024年10月8日火曜日

読書・「別れの挨拶」丸谷才一著・集英社文庫

 

  猛暑の夏もようやく過ぎ、10月に入りようやく秋めいてきました。いつもの散歩コースではない、新しいコースを歩いていますと、息をのむようなうつくしい葉っぱの紅葉に出会いました。

  よく見ると夏の思い出を残したような黄緑色を少しだけ残して、むらさきがかったピンク色がすてきでした・・。



 丸谷才一さんの最後のエッセイ集「最後の挨拶」を、読みました。

 解説で川本三郎さんは、丸谷さんがお好きだったものは、和歌や源氏物語に代表されるような雅(みや)びの世界の王朝文化、クラシック音楽、そして、若き日に学んだイギリス文学だったと、書かれていたのですが、改めてわたしも納得でした。

 


 Ⅱの「王朝和歌を読む」では、古代和歌の呪術性など、特異な視点からの発想で和歌論を述べられていて、彼の和歌に対する造詣の深さと愛を、感じたのでした。

 丸谷さんはたしか、王朝の和歌の中では、後鳥羽院と定家が、いちばんお好きだと、「文学ときどき酒」という対談集の中でいわれていたのを思い出します。そういえば、彼の「後鳥羽院」という本の中でも、後鳥羽院と定家を、くわしく関連づけて、分析なさっていましたし・・。

 



 吉田秀和さんについて、丸谷さんは、彼の評論はとにかく文章がうまく、近代日本の評論家中、随一であり、戦後の日本の音楽は、吉田秀和の作品であるとまで、いわれているのですが、吉田秀和ファンのわたしとしても、うれしくなるお言葉でした。丸谷さんのご趣味は、吉田秀和の本を読むことだったとか・・。

 吉田秀和さんが、音楽評論だとすれば、丸谷才一さんは、本の評論や書評を通じて、お二人ともに、日本の文化の向上に役立たれた方々だったと、改めて思った読書でした。



     

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