那須に戻りましたら、いつもの散歩する公園はこんな感じになっていました。
小堀杏奴さんが書かれた本「朽葉色のショール」を読んだのですが、この季節にはぴったりな題名かもしれません。
この本はなぜか以前からずっと気になり、読みたいと思っていたのですが、先日、神保町の古本屋さんの店頭で美本を偶然に見つけ購入したものです。
本を読んでみると杏奴さんと、茉莉さんはご姉妹とはいえ、まるでキャラクターが違うお二人でした。
お父さまの鴎外も、やはりこのお二人のことを、「同じ子供でも、性格や物の考えかたがひどく違うものだね」
そしてまた、
「茉莉は記憶力に優れ杏奴は理解力に優れている」ともおっしゃっていたそうです。
わたしがお二人の本から受けた印象は、茉莉さんは、耽美派で独特のご自分の世界を持っていらっしゃり、杏奴さんは、真摯に人生を生きていらっしゃる方ということでした。
お二人ともに、プルーストの「失われた時を求めて」について書かれているのも面白く感じました。
茉莉さんは、シャルリュス男爵の傲岸と冷徹から、世紀末の倦怠の美を甘い雫のように唇に受けることができると書いていらっしゃり、
杏奴さんは、読書の愉しみという章で、プルーストと祖母の関係から死についての考察を真摯になさっているというふうに、お二人の個性の違いが出ています。
この本の「朽葉色のショール」という題名は、お二人のお母さまがご自分で編んで使用していらしたショールのことです。
お父さまの鴎外が亡くなられたあと、残されたご家族は、さびしい生活をなさっていたようです。
この朽葉色のショールをかけたお母さまと、離婚して家に戻られていた姉の茉莉さん、
まだ未婚だった杏奴さん、そして身体の弱かった弟さんが揃って郊外にでかけたのが、
最後のお母さまとの思い出になったと書いていらっしゃいます。
杏奴さんは、その後画家と結婚なさって一男一女の母になられ堅実で幸せな家庭を築かれているご様子が伺えます。
この本は、杏奴さんの堅実であたたかいお人柄が偲ばれるような本でした。
0 件のコメント:
コメントを投稿