先日、プルーストの公開セミナー「新訳でプルーストを読破する4」に行ってきました。今回は第4回で「花咲く乙女たちのかげにⅡ」でした。
立教大学の時計のある建物は、つたの新緑がみずみずしく、若葉の季節を感じさせてくれました。
このセミナーに参加するのは2回目でしたが、今回のセミナーは前回よりも楽しめたように思います。
ゲストは明治学院大学フランス文学科教授の湯沢英彦さん。
彼は、プルーストに関する著書も書かれているプルースト研究の専門家で、ゆとりのある雰囲気が感じられ、すてきな時間を共有することができました。
このセミナーでは、いつも好きなページを聞かれるのですが、わたしの今回の好きなページは、451pのこの箇所でした。
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人生の素材など、芸術家にはものの数ではなく、おのが天分をさらけ出す機会にすぎない。
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引用 「失われた時を求めて」4花咲く乙女たちのかげにⅡ
プルースト著 吉川一義訳 岩波文庫451p
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ただ緑陰の匂いを嗅いだというだけで、馬車でヴィルパジリ夫人の向いの席に座っていたり、その夫人に自分の馬車から挨拶するリュクサンブール大公妃に出会ったり、グランドホテルに夕食に帰ったりすることが、現在からも未来からも得られない、生涯に人がたった一度しか味わえないえも言われぬ幸福のひとつとして、わたしに何度たちあらわれたことだろう!
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引用「失われた時を求めて」4花咲く乙女たちのかげにⅡ
プルースト著 吉川一義訳 岩波文庫 189p
この長いプルースト特有の文を読んでいると、フランス語の原文で読めたらどんなにいいかしらとしみじみと、思われます。
このセミナーで今回知り合いになった方は、フランスに留学なさっていた方で、プルーストをフランス語で読まれたということですが、彼女によれば、この4の巻は、流れるようなフランス語の文を、心地よく感じながら読まれたということでした。
そのお話しを彼女からお聞きした時、なぜかいままではあまり魅力を感じなかった4巻が
好きになりました。
緑陰の匂いを嗅いだとき、昔の出来事がよみがえり、人が生涯でたった一度しか味わえない幸福のひとつとして、その後の人生に何度もあらわれる。
こういうことは、わたしの人生でも同じような経験があります。
読むたびに、人生の味わい方の深度を、深めさせてくれるプルーストのこの本に出会えたことは、幸運だったと、しみじみと思います。
そして、わたしにプルーストの再再読をうながしてくれる機会となるこのようなセミナーにも、感謝しております。
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