アポリネールという詩人をご存知でしょうか。
彼の姿は、画家のアンリ・ルソーが描いた、
「詩人に霊感を与えるミューズ」で見ることが
できます。
この絵の詩人は、もちろんアポリネール、
彼に霊感を与えているミューズは、画家の
マリー・ローランサンです。
二人の姿は、あまりにも個性的で、一度見たら
忘れられないほどです。
「詩人に霊感を与えるミューズ」アンリ・ルソー画
「アポリネール詩集」27p
この豪華なアポリネールの詩集は、
以前に古本市で買ったものですが、
ピエール・カルダンが装幀と挿画を
担当しています。
ピエール・カルダン装幀と挿画の
「アポリネール詩集」窪田般彌訳 ほるぷ出版
アポリネールが、詩集「アルコール」の中で書いた詩
「ミラボー橋」は、あまりにも有名で、
日本では、堀口大學さんの名訳がありますが、
この本の窪田般彌さんの訳を紹介させていただきます。
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ミラボー橋
アポリネール (窪田般彌訳)
ミラボー橋の下をセーヌが流れる
二人の恋も
僕は思い出さねばならないのか
喜びはつねに苦しみのあとにきた
夜よこい 鐘もなれ
日々はすぎ 僕は残る
手に手を重ねて向きあったままでいると
二人の腕の橋下を
永遠の眼ざしをした
あんなに疲れた波が流れる
夜よこい 鐘もなれ
日々はすぎ 僕は残る
恋はすぎる この流れる水のように
恋はすぎ去る
人の世の何と歩みのおそいこと
希望ばかりが何と激しく燃えること
夜よこい 鐘もなれ
日々はすぎ 僕は残る
日々が去り月日が消える
すぎた時も
昔の恋も戻ってこない
ミラボー橋の下をセーヌが流れる
夜よこい 鐘もなれ
日々はすぎ 僕は残る
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引用 アポリネール詩集ほるぷ出版16p-18p
この詩は、アポリネールとマリー・ローランサンの恋が
終わったときに作られたということです。
二人は、アポリネールが27歳のときに、ピカソの紹介で
出会い恋に落ち、その後32歳のときに、ローランサンとの
恋は破たん、そしてこの詩が生まれたという
いきさつがあります。
また、この本のなかの動物詩集には、
「猫」という題の詩があり、アポリネールの究極の人生観が
書かれていて、おもしろいです。
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「猫」
アポリネール (窪田般彌訳)
僕は家に持ちたい、
分別のある女房一人と、
書物のあいだを通り抜ける子猫一匹、
それに、彼らなしには生きていけない
いつもそばにいてくれる友達数人。
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引用 アポリネール詩集 83p
窪田般彌訳 ほるぷ出版
この詩には、R・デュフィの小粋な猫のこんな
挿絵もついています。
見にくいかもしれませんが、真ん中にしまとら猫が
こちらを向いて座っています。
R・デュフィの絵「猫」83p
アポリネールの母は、ポーランドの亡命貴族の
娘でしたが、父は誰なのかよくわかっていません。
彼はローマで生まれていますが、母といっしょに
19歳のときにパリに出てきたということです。
女性にやさしく親切だったというアポリネールは
画家のマリー・ローランサンはじめ、何人もの女性と
恋をするのですが、いつも実りませんでした。
でも、最後には、この「猫」の詩のような家庭を作ることが
できたのですが、わずか7か月でスペイン風邪にかかって
亡くなっています。
アポリネールは最後まで、ローランサンのことが
忘れられなかったとも言われています。
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