2015年1月21日水曜日

こぎれの巾着袋と沢村貞子さんの本


沢村貞子さんの書かれたエッセイ「私の浅草」には
「こぎれやさん」の話が出てきます。

公園裏にあったこぎれやさんでは、色とりどりの
こぎれが、七夕の短冊のように、つるされて
売られていたそうです。

このこぎれは、色町の人たちが仕立て屋さんに
反物をだして裁ってもらったときの余り布だそうで
これを集めて、ほまち(役得)として、こぎれやさんで
売っていたということです。

このこぎれを、娘さんたちがお小遣いをためて買い
手提げ袋や財布、前掛けなどに作っていたということ
です。
                                                                    
わたしもこぎれで巾着袋を、作ったことがあるのですが
こぎれを縫い合わせて作るのは、なかなか楽しい
ものです。


                こぎれで作った巾着袋(わたしの手作り)



                「わたしの浅草」沢村貞子著 新潮文庫        

沢村貞子さんのエッセイは昔から好きでよく読んでいる
のですが、「わたしの浅草」は、
第25回日本エッセイストクラブ賞を受賞しています。

この本は、戦前の良き下町の暮らし向きが
しのばれて、こころがあたたまるようなエッセイです。

でもエッセイというよりは、まるで小説を読んでいるような
おもしろさがあって、すきな本です。

このこぎれやさんのやせたおかみさんは、どことなく
粋な年増だけれど、ご亭主がばくちうちとかで
いつもぼんやりと、手あぶりの灰をかきならしていて
こめかみに頭痛膏を貼っていたというのですから
まるで、映画に出てくるようなお話だと思いました。



                「わたしの台所」沢村貞子著 光文社

「わたしの台所」は、いつ読んでも
沢村さんの聡明さを感じる本です。

ご自分で食いしん坊とおっしゃるだけあり、
食べ物の話が多いのですが、
たとえばほうれんそうの茹で方などは
半カップの水をふっとうさせて、蒸し煮に
するとよいということで、すぐに役にたちました。

これからもたびたび読んで参考にしたいような
ことが多く書かれていて、大事にしたい本の1冊です。



                「寄り添って老後」沢村貞子著 ちくま文庫

「寄り添って老後」は、晩年の作品ですが
お母さまから教えられた人生観
「ひとさまに迷惑をかけないこと、
自分のしたことに責任をもつこと」
という言葉が書かれています。

この人生訓は、沢村さんの人生の大事な
指針になっていたようです。


沢村さんが亡くなられた後、沢村さんの付き人を
なさっていて長い親交のあった山崎洋子さんが
「沢村貞子という人」という本を書かれています。

そこには、沢村さんの最後が書かれているのですが
やはり、わたしのイメージ通りの凛となさった沢村さんの
最後の姿が描かれていました。

「分相応に ほどほどに
ほどほどのしあわせ
足るを知って サラリと明るくと生きる」

沢村さんのやさしいお声が聞こえてきそうな読書でした。


                「沢村貞子という人」山崎洋子著 新潮文庫









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