冬晴れの日の白河・南湖公園のメタセコイアです。すっかり葉を落とした木々が、空に向かってスックと立っている姿は、ほれぼれとするほど見事でした。
「ペスト」は、以前に読んだ本ですが、本箱にあったものを見つけ、コロナ禍のいま、再読してみました。
最初の数ページで、なぜか文体に惹かれました。翻訳者の宮崎さんは、解説でこの文体のことを、誠実で清潔な文体といわれています。そしてさらにその簡潔な文体のかげには、感動の美しさがひっそりと息づいているとも述べられているのですが、わたしが文体に惹かれた理由はそういうことだったのかと、納得できました。
物語は、アルジェリアのオラン市で4月16日の朝、主人公の医師ベルナール・リウーが階段口で死んだネズミにつまずいたところから、始まります。ペストは次第に猛威をふるい街は閉鎖されるのですが、死者の数が毎日何人と発表されるところなどは、今回のコロナ禍のなか、実感を伴って感じられました。
リウーは献身的にペスト患者をみるのですが、そんなある日、リウが友人のタルーといっしょに海で泳ぐシーンがあります。ペスト禍のなか、二人はしばしの心の安らぎと幸福感を共感するのですが、ここはほっとする好きな場面でした。
そしてついに2月のある晴れた朝の明け方、市の門は開けられ、人々はペストという不条理から解放されるのでした。ペスト禍という不条理な出来事のなか、人々はどう過ごしたか、そしてそれが過ぎ去ったあと、何が残ったのかを語るため、物語の最後にこの本の作者は、リウだとあかすのでした。
リウはもちろんカミュで、彼がペストという天災の最中に教えられたことは、人間の中には軽蔑すべきものよりも、賛美するもののほうが多いということ。そして、ただそれだけをこの物語で書きたかったのだと、カミュはリウの言葉を借りて語っています。
日本でも、東日本大震災という天災のときに、人々のやさしさと善意がいっぱいあったことは、わたしのこころにもいまでもしっかりと、残っています。
今回の世界的なコロナ禍のあと、人々のこころには、何が残るのでしょうか・・・。考えさせられる本でした・・。
カミュは、1957年に44歳という若さでノーベル文学賞を受賞し、1960年に自動車事故で47歳で亡くなっています。
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